ボクシングWBC世界バンタム級王者井上拓真(30=大橋)が、国内ボクシング史上最多観客数の大舞台でレジェンド撃破を狙う。5月2日、東京ドームで元4階級制覇王者の同級4位井岡一翔(37=志成)との初防衛戦を控え、18日に横浜市の所属ジムで練習を公開した。試合当日は5万5000人の超満員になる見通し。王者ながら挑戦者魂を燃やす井上は日本人マッチ6戦全勝の井岡に初黒星をつけ、史上9人目の世界5階級制覇を阻止する意気込みをみせた。
◇ ◇ ◇
井上は“レジェンド狩り”の使命に集中していた。日本男子初の4階級制覇を成し遂げた井岡との初防衛戦。同門の先輩、八重樫東とのWBA、WBC世界ミニマム級王座統一戦で井岡が勝利した12年6月、まだ井上は高校2年だった。その実績に敬意を表しながら「井岡選手はタイミングがピカイチ。見た目ではわからない強さがあると思う。自分が世界王者だが、自分が挑むような気持ちで仕上げている。挑むぐらいの覚悟でぶつかり、しっかりと倒したい」と意気込んだ。
所属ジムの大橋秀行会長(61)は試合当日の観客人数が5万5000人になる見通しを明かした。同会長は「おそらくいく」と90年2月の世界ヘビー級タイトル戦、タイソン-ダグラス(ともに米国)戦の5万1600人というボクシング国内最多観客数を超えると解説した。24年5月の東京ドーム興行でマークした4万3000人も大幅に上回る数字となる。2年前は石田匠を下し、2度目の防衛を成功させていた井上は「東京ドームという他では味わえない空間なので楽しみに戦いたい」と高揚感を口にした。
昨年11月、那須川天心(帝拳)との同級王座決定戦に勝利し、世界王座に返り咲いた。今月11日に元2階級制覇王者フアンフランシスコ・エストラダ(メキシコ)を下し、同級挑戦者決定戦を制した那須川から再戦ラブコールを受けたが「気にしていられない。今は井岡選手だけをずっとみつめている」と集中する。
前回はキック時代を通じて無敗だった那須川にキャリア初黒星をつけた。今回の井岡は対日本人戦6勝負けなし。井上は「レジェンドを相手にどう戦って、どう勝つのか。日本人として初めて黒星をつける。そこも注目してもらいたい」と世界王者の風格を漂わせていた。【藤中栄二】
○…井上の公開練習には井岡陣営の姿はなかった。世界戦の公式日程として組まれるマスコミ向けの練習公開日には、対戦相手のジム関係者が視察するのが通例となっているが、井岡のトレーナーを務める志成ジムの佐々木修平会長ら関係者の視察はなし。事前に志成ジム側は大橋ジムに対し、公開練習を視察しない意向を伝えてきていたという。
◆ボクシング観客数メモ 90年2月11日、東京ドームで開催された世界ヘビー級タイトル戦、マイク・タイソン-ジェームス・ダグラス(ともに米国)戦の5万1600人が国内最多。2位は88年3月21日、同じ東京ドーム開催のタイソン対トニー・タッブス(米国)戦の5万1000人。ドーム前身・後楽園球場で白井義男が52年5月19日、世界フライ級王者ダド・マリノ(米国)を下した時は4万5000人を記録した。世界では93年2月20日、メキシコのアステカ・スタジアム開催のWBC世界スーパーライト級タイトル戦、フリオ・セサール・チャベス(メキシコ)-グレグ・ホーゲン(米国)戦が13万2274人で有料入場興行として最多となる。