全部見せました。プロボクシング4団体統一スーパーバンタム級王者の井上尚弥(33=大橋)が敵陣営に最高の仕上がりをアピールした。WBA、WBC、WBO世界同級1位の中谷潤人(28=M・T)との防衛戦(5月2日、東京ドーム)を控えた20日、横浜市内で練習を公開。中谷陣営3人が視察する中、上半身裸になって、惜しげも無く自慢の強打を披露した。
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井上の声がジムに響き渡った。「包み隠さず全部見せました」。公開練習の最後のサンドバッグ打ちを終えた直後だった。目の前で見ていた中谷陣営の村野会長を意識したような、ひときわ大きな声だった。
世界注目の無敗対決。公開練習には200人近い報道陣に加えて、中谷陣営3人が視察に訪れていたが、12日後の大一番を控えて、井上はあえて手の内を隠すことはしなかった。
スパーリングこそ公開しなかったが、切れのあるシャドーボクシングの後、Tシャツを脱いで見事に鍛え上げられた上半身を披露。ミット打ちでは近距離、中間距離などあらゆる角度から多彩な強打を、惜しげもなく爆音とともにミットに炸裂(さくれつ)させた。
「全部見せた」のは自信の裏返しでもある。「(中谷の試合は)一通り見てきた。スタイルは(頭に)入り込んでいる。どんな入り方、戦い方でも準備はできている」と井上。
特に昨年6月にWBC世界バンタム級王者だった中谷が、初回から猛攻を仕掛けてIBF同級王者の西田凌佑に6回終了TKO勝ちした一戦は参考になったようで「あの戦い方を見せてくれたのでイメージを持ちやすい」と明かした。
決戦が目前に迫った心境は「楽しみでワクワクしている」。会見でトレーナーの父真吾氏が「空間を見てもらいたい」と明かすと「言い過ぎ」と言って井上が笑って制するシーンも。大一番に向かう過程を本当に楽しんでいるようだった。
背負うリスクは井上の方がはるかに大きい。負ければこれまで積み上げてきた実績や評価をすべて中谷に奪われるからだ。それでも「最近はどの試合もそう。この試合をする上で(リスクからは)絶対に逃げられない。今回に始まったことではない」と本人は意に介していなかった。
「チケットは1カ月以上前に完売した」と大橋会長。東京ドームが5万5000人の超満員で埋まることは確実。「重圧は今始まったことではないが、負けられないという思いは強い。これで終わりではないので通過点」。井上の言葉には大一番を何度も乗り越えてきた、揺るぎない自信がにじんでいた。【首藤正徳】