小さな大横綱が天国に旅立った。大相撲の元横綱千代の富士の九重親方(本名・秋元貢)が7月31日午後5時11分、膵臓(すいぞう)がんのため、東京・文京区内の病院で死去した。61歳だった。

 北の富士さんは愛弟子の早すぎる死に言葉が出なかった。場所で会うとあいさつする程度で、話したのは昨年九州場所中の電話が最後になったそうだ。「部屋の連中に大丈夫と聞いていたんだが。早すぎるも何も、もったいないことを…。これ以上コメントする気にはなれない」と言うのが精いっぱいだった。

 北の富士さんは74年に井筒部屋を興したが、77年に元横綱千代の山の九重親方の死去で部屋を合併させて継承した。千代の富士とは兄弟弟子から師弟関係に。強引な投げから一気の寄りの相撲へと変身させて花を開かせた。

 ともに明るい性格で、時には友達のような関係で愛弟子をもり立てた。千代の富士が引退相撲を終えた92年には、すっぱりと部屋を譲った。93年には元横綱北勝海の八角親方が独立すると同時に移籍した。98年に理事候補を外れるとあっさり退職した。

 これで師弟関係がこじれたとうわさされたが「千代の富士は1人でやれるし、邪魔になるだけ。八角は応援してやらんと」と話していた。「俺はアイツを信頼し、うわさなんか何とも思わん」とも。発病時にもすぐに「医師を紹介するよ」と電話した。弟子が先に逝く無念さは計り知れない。