横綱白鵬(33=宮城野)が、1敗の大関高安を押し倒しで下して全勝を守り、単独トップに立った。前の一番で全勝の鶴竜、2敗の稀勢の里が負けたため、自身が負ければ84年春場所以来となる3横綱総崩れを、結びの一番で阻止。今年初の優勝、残り3勝に迫った幕内1000勝へ突き進む態勢は整った。

異様な雰囲気が結びの一番を包み込んだ。前の取組で2横綱が連敗。負ければ84年春場所以来34年ぶりの3横綱総崩れだっただけに、白鵬にかかる重圧は大きかった。1度目の立ち合いは高安につっかけられて、2度目の立ち合いは呼吸が合わず、互いに手を着けられないでいると自ら嫌った。3度目の立ち合いは成立。右の張り手は高安の顔をかすめたが、動きが止まった相手を両腕でかち上げるようにして一押しで押し倒した。

土俵の上での雰囲気を引きずるかのように、支度部屋では口数が少なかった。質問に対して「そんな感じ」「かなぁ」と相づちを打つ返事ばかり。モヤモヤしたか? と問われると「まぁ、勝ちは勝ちですから」と声を振り絞るように言った。

浮かない白鵬だったが、世界的ストライカーが元気づけてくれた。帰り際、観戦に訪れたサッカーJ1神戸の元ドイツ代表FWポドルスキと談笑した。昨年10月の大阪巡業で初対面して以来2度目の対面で「神戸牛はいっぱい食べた?」などと笑顔で質問するなど、終始穏やかな表情。サイン入りのドイツ代表のセカンドユニホームをもらうと、がっちり握手を交わした。約5分間の談笑後には「(今日は)良いところを見せられたな」と満足感たっぷりの表情だった。

秋場所は15年途中休場、16、17年は全休で「暑いのが苦手」と、名古屋場所での疲れと残暑に毎年苦労した。それでも今場所は「先場所途中休場の勢いがあるから」と力が有り余っているという。それだけに昨年九州場所以来、今年初の優勝へ闘志を燃やす。唯一の全勝横綱は「一番一番、今度は引っ張っていくだけです」と責任感を口にした。【佐々木隆史】