ケガから復帰し関取としては16年夏場所以来、15場所ぶりとなる本場所の土俵に上がっている東十両13枚目の豊ノ島(35=時津風)が、白星を2ケタに乗せた。

3敗で十両優勝争いでトップに並ぶ東十両3枚目の琴勇輝(27=佐渡ケ嶽)と対戦。重戦車のような突き押しを、丸い土俵をうまく使いながら懸命にしのぎまくる。勝機をさぐる中で、相手がグイと伸ばした左腕をたぐり、はね上げる。うまく体を泳がせると、さらに右手で相手の結び目あたりをつかみ完全に体を崩した。最後は強烈な押しで土俵の外に出した。

連日の“V戦線かき回し役”を務めている。前日も十両優勝争いでトップを走る照強(伊勢ケ浜)を引きずり下ろす白星。自らも千秋楽に優勝の可能性を残した。3敗で単独トップの友風(尾車)を、1差の4敗で琴勇輝、照強とともに3人で追う展開で千秋楽を迎える。

しのいでつかみ取った白星を「うまく我慢できたかな。突ききられるか、突かれていなしてか。勝つとしたらあの流れだった」と、琴勇輝の突き押しで真っ赤に充血した、首の下から胸のあたりを触りながら振り返った。

優勝争いに残ったことには、変な色気を頭から外そうとした。4番前に3敗でトップを走る友風が勝ったことに「『あっ、友風は勝った』と一瞬、気にしそうになった」と優勝の2文字がよぎったが「(優勝争いは)関係ない。勝って2ケタにするという意識で上がった。(トップの相手を)引きずり下ろしたという思いはない」と自然体を自分に言い聞かせた。

「2ケタに乗せて、いい記念日になった」と言う。9年前のこの日、沙帆夫人と交際を始めた日だった。09年九州場所10日目。場所前に「勝ち越したら付き合ってほしい」と伝えていた豊ノ島は、8勝目(2敗)を挙げ晴れて交際が始まったという。この場所は11勝4敗で技能賞を獲得した。そんなノロケ話もできるほど今は相撲を楽しんでいる。優勝の可能性が残される千秋楽も、存分に相撲を満喫する。