双子の兄、西幕下2枚目貴ノ富士(22=千賀ノ浦)が7戦全勝で幕下優勝を果たし、再十両を確実にしている名古屋場所(7月7日初日、ドルフィンズアリーナ)へ弾みをつけた。7番相撲で全勝同士の東幕下35枚目千代嵐(27=九重)を上手投げ。もろ手で立ち、ケンカ四つの相手に差し込まれ土俵際まで後退したが、呼び込んで倒れながら決めた。「(中に)入られたけど落ちついていた。(土俵際は)相手が倒れ込むのが見えていた。我慢できた」と、落ちついた口調で振り返った。

「自分を信じて相撲を取り切れた」と、精神面の充実を好調の要因に挙げた。3月の春場所で再十両を果たすも、6勝9敗で負け越して1場所で陥落。幕下として出直すことが決まった夏場所番付発表翌日の稽古再開日、白まわしではなく黒まわしを締め「稽古場に降りたくなくなった。腐りかけた」と、現状を受け止められなかったが、周囲の激励を力に変えた。春巡業中には玉鷲ら関取衆から「7番勝って黒まわしを捨てろ」と言われたという。場所前には「一番そばにいる人に『自分に自信がないなら、自分を信じられるほど稽古をした方がいい』と言われた」と明かす。四股やすり足などの基礎運動で体をいじめ抜き、部屋の若い衆に胸を出すなどして稽古に活気をもたらした。全勝の要因を「稽古量」と言い切る。「先代(元貴乃花親方)にも自分はスタミナだと言われている。大阪場所はそこが足りなかった。場所が終わったらまたしっかり稽古したい」。

双子の弟、貴源治が十両優勝へひた走っている。「刺激になっているというより、うれしい。悔しいは悔しいけど、自分の相撲を取り切りたい」。兄弟のアベックVへ、まずは兄が自身初の幕下優勝をつかみ取った。