横綱鶴竜(33=井筒)が、全勝で単独トップを守った。東前頭5枚目の琴奨菊を突き倒した。初日からの11連勝は、優勝した昨年3月の春場所以来、2度目で自己最長に並んだ。

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白星を積み重ねている今場所の、鶴竜の勝因は「右の早さ」にあると思う。上手にせよ下手にせよ、早く取って優位に立ってきた。それが今日は、左四つに組み止めたにせよ、右が取れずに苦戦を招いた。ただ、焦ってはいなかったはず。余裕とまではいかなくても組み止めれば何とかなる、という気持ちは、50回以上の対戦で体が覚えていただろう。がぶりたかった琴奨菊を、がぶらせなかったも同じ。逆に、新顔なら細心の注意を払うところを、50回以上も戦ってきた“慣れ”のようなものが、ちょっとした油断につながることもあるが、左でも取れる器用さ、相撲勘の良さで元大関との力量差を見せつけた。白鵬に1差をつけて、さあ大関戦…と通常の場所ならそうなるところが、両関脇と平幕中位が相手。微妙にリズムを狂わされそうなところだが、攻めの姿勢を貫けばおのずと結果はついてくると思う。(日刊スポーツ評論家・高砂浦五郎=元大関朝潮)