西前頭7枚目友風(24=尾車)が横綱初挑戦で金星を射止めた。全勝の鶴竜をはたき込み、土をつけた。序ノ口デビューから13場所目の金星奪取は、元大関小錦に並ぶ史上最速記録だ。元大関琴欧洲らに並ぶ史上2位タイの13場所連続勝ち越しに続いて、V戦線を揺るがす大仕事で、10勝3敗とした。白鵬が妙義龍を下し、1敗で鶴竜に並んだ。幕尻の照強が2敗にいる。

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地鳴りのような大歓声に、ドルフィンズアリーナが揺れた。舞い飛ぶ座布団。13日目、結びで起きた大波乱。土俵下に鶴竜がいた。土俵上に友風がいた。

「実感がない。夢みたいで…。自分のかかとが出てないことは分かったけど、勝ったのかなと」

鶴竜の当たりを受け止め、はたき込んだ。昭和以降初めて4大関全員が休場し、本来なら当たらない西前頭7枚目に白羽の矢が立った。「横綱は雲の上の存在だし、取組を組んでいただき、すごく幸せ」。天の配剤をものにした。

場所入り前の車中での“ラブコール”が効いた。

「オマエは絶対楽しみにしてるだろうけど、俺の方が楽しみだ。言っとくけど、横綱はめちゃくちゃ強いぞ。萎縮するな。体の反応に任せろ」

右膝負傷で休場中の嘉風だった。十両になっても付け人を志願するほど敬愛する兄弟子と連日、連絡をとる。この日の一番は助言通り。友風は「胸を借りるつもりで思い切り当たって、とっさに体が動いた」と、引き技を振り返った。

関取になって作った浴衣は、音符を模様に「TOMOKAZE」の字をデザインした。ピアノが特技の男は支度部屋で頭に流れるメロディーを問われて「母親の悲鳴が聞こえてる感じ。おそらく号泣してるでしょうから」と笑った。

優勝争いを一気に白熱させた。序ノ口デビューから13場所目の金星は、史上最速タイの快挙になった。【加藤裕一】