東幕下3枚目の玉木(26=高砂)が、ともに3勝3敗で勝ち越しをかけた西幕下2枚目豊昇龍との一番を制し、新十両に前進した。

腰を下ろしてから互いに手をつかず、約30秒もけん制し合う緊張感漂う立ち合い。先に相手が両手をついたのを確認した玉木は、左足を下げてから頭でぶつかった。下から突き放してきた相手に対抗して突っ張り、タイミングの良いはたき込み。豊昇龍の左手が一瞬、土俵についた時点で勝負は決まった。だが両者とも、それに気付かず相撲は続行。実際には勝負が決まった後も玉木は左を差して寄り倒し、文句なしで白星を手にした。

来場所の新十両昇進については、他の幕下上位や十両の勝敗次第で、千秋楽の結果を受けての今月24日の番付編成会議で決まる。それでも、勝ち越しで昇進の権利を得た玉木は、開口一番「うれしいです」と、声を弾ませた。豊昇龍とは2場所連続の対戦で、前回は押し出されて敗れた。玉木は「先場所は(相手を)見て立ったので、今回は思い切り当たろうと思った。思い切りやって、ダメなら来場所ぐらいのつもりで取った」と、この日に懸ける強い思いを打ち明けた。

今場所は2連勝後に3連敗し、勝ち越しに後がなくなってから2連勝で勝ち越した。3連敗した際、師匠の高砂親方(元大関朝潮)に食事に誘われ「頑張れ」と奮起を促された。相手に合わせた立ち合いで敗れた先場所から一転、この日の思い切りの良い相撲内容につなげた。

先場所で幕内優勝した、同部屋の東前頭筆頭朝乃山とは、近大時代からの同期で、入門も一緒だった。その朝乃山の優勝に刺激を受けた。「あこがれというか。一緒に幕内で取りたい」と、今は遠い存在のように感じているが、近づきたい思いは強い。

三重県伊勢市の出身で、今場所はご当所でもあり「地元も近いので、うれしい」と笑顔を見せた。場所後は昇進の有無に関係なく帰郷予定。勝ち越しの報告だけではなく、新十両昇進という最高の手土産を持って、凱旋(がいせん)できることを願っている。