幕内最軽量98キロの西前頭6枚目炎鵬(25=宮城野)が東前頭5枚目碧山(33=春日野)を破り、1敗を守って序盤5日間を終えた。

身長で23センチ、体重で101キロ上回る相手の突きに耐えて引き落とし。幕内2場所目、名古屋場所での195センチ、206キロの魁聖(現十両)戦に続く、巨漢力士からの白星。兄弟子の横綱白鵬と「チーム宮城野」で今場所を盛り上げる。全勝が消え、休場した平幕の若隆景を除いて1敗が7人となった。

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「怖かった。のみ込まれるかと…」。仕切り線から自身より倍以上重い相手に相対した炎鵬は、時間いっぱいで何とか腹をくくった。立ち合いで突き放され、その後の展開は「覚えていない」と、引かずに無心の攻め。何度か張られても下からあてがい、はたきにもぎりぎりで堪えた。

間合いが生命線だった。幕内在位48場所を誇る碧山の武器は強力な突き。この日の朝稽古後は「懐には入れない。相手との距離感が大事」と心に刻んだ。取組中、相手の攻めをしのぐ中で「腰が引けて嫌がっているのが分かったので、そのまま我慢した」。碧山の迷いを見逃さず、右へ俊敏に動いて両手をつかせた。

かつての兄弟子のバックアップが心強い。9月の秋場所で引退した元幕内大喜鵬の山口雅弘さん(30)が、現在もちゃんこ番など裏方として部屋の力士を支える。その料理を食べて、秋巡業後に2、3キロ減った炎鵬の体重は適正に戻った。場所前は山口さんが焼いた牛肉を食べることが多く、焼き肉ダレも特製。タレは炎鵬いわく「優しい味」で、山口さんは「企業秘密なので」と詳細は明かさなかったが、女性人気を考慮して「ニンニクは少なめ」と、イケメンの弟弟子へ気遣いは抜群。山口さんは「ONE TEAMですよ」と右手で親指を立てた。

現時点の星数は兄弟子の白鵬と同じ。「まだまだです。横綱を援護できれば」と炎鵬。好調を維持すれば、三役との対戦の可能性もある。休場者続出の今場所で、168センチの小兵が救世主となる。【佐藤礼征】