小結朝乃山(25=高砂)が、新三役で2ケタ白星を挙げ、年間最多勝を確定させた。西前頭4枚目の琴勇輝を押し出し。前頭正代とともに3敗を守り、1敗白鵬のこの日の優勝を阻止した。新三役での2ケタ白星は15年春場所の照ノ富士以来、4年8カ月ぶり。大鵬、貴花田(貴乃花)らと肩を並べた。さらに最高位が小結以下の力士では初の年間最多勝。来場所の大関とりの可能性も出てきた。

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まわしを取れなくても強かった。朝乃山が突きの応酬でも、押し相撲の琴勇輝を圧倒。相手の土俵に立っても慌てず、圧力のある相手に逆に圧力をかけ続けて押し出した。「まわしは、なかなか取れないと思い、立ち遅れたけど自分から攻められた。落ち着いて取れた」。風格さえ漂わせた。

前日12日目は関脇御嶽海に完敗した。この日の朝稽古は、今場所初めて休み、御嶽海戦の残像を取り除くため、心身のリフレッシュに努めた。「昨日(御嶽海戦)は、まともにまわしを取りにいきすぎたのがダメだった」。まわしよりも、この日の琴勇輝とは13センチ差もある188センチの体格を生かして圧力をかける。結果としてリーチ差も生きる。右四つの絶対的な型を確立させつつ、柔軟に対応したことが成長の証だった。

この日で白星を2ケタに到達させた。新三役の2ケタは照ノ富士以来、4年8カ月ぶり。1場所15日制が定着した49年夏場所以降、70年間で21人目。大鵬、貴花田、白鵬らに続いた。またこの日、今年54勝目で年間最多勝も確定。残り2日連敗なら小結阿炎と並ぶ可能性はあるが、抜かれはしない。最高位が小結以下の年間最多勝は、年6場所制となった58年以降初。関脇以下としても60年の大鵬、92年の貴花田の2人しかいない。「負け越してもあきらめず7勝8敗に盛り返した」と、要因を分析した。

取組後、高島審判部長代理(元関脇高望山)は「あと2つ勝ったら面白くなるよね」と話した。断定口調ではないが、今場所12勝なら、来年1月の初場所後の大関昇進の可能性があることをにおわせた。朝乃山は優勝については自力が消滅し「考えていない」。だが「来場所のためにもつなげていきたい」と今場所12勝は意欲十分。三役での2ケタ白星で、少なくとも大関とりの起点となったのは間違いない。【高田文太】