新婚パワーで大混戦場所から抜け出す。東前頭6枚目高安(30=田子ノ浦)が、照強をはたき込みで破って2敗をキープ。1敗の大関貴景勝と平幕の琴勝峰、翔猿の全員が負けたため、高安を含む9人がトップで並んだ。

8日目を終えて9人以上がトップに並ぶのは、2敗で10人が並んだ03年名古屋場所以来17年ぶり。中日折り返しで1敗力士不在も同年以来。横綱不在の混戦場所で、大関経験のある実力者が初賜杯を狙う。

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実力者の高安はどっしりと構えていた。「ボチボチですね。負けた相撲もしっかりと反省して明日に生かしたい」と言葉はシンプルだが声は明るい。自身の取組前に、翔猿と琴勝峰が2敗に後退したが「勝ち越すことだけを目指す」と他人の結果は気にしなかった。

相撲もどっしりしていた。初顔合わせの照強は、立ち合いで奇襲を仕掛けてくる不気味な相手。この日はまっすぐぶつかってきたが、中に潜り込まれそうになったり、腕をたぐられたりとあの手この手で攻められた。それでも慌てることなく丁寧に対処。最後は冷静にはたき込み「自分の体勢になるまで我慢しようと思った」と狙い通りだった。

二人三脚で混戦から抜け出す。昨年10月に婚約を発表した演歌歌手の杜このみ(31)と7月上旬に結婚。婚約後に大関から陥落し、ケガで休場が続く時もあった。そんな時に支えられ、先場所で1年ぶりに勝ち越した時は「本当に2人で喜んだ。いろいろ気を使ってもらっているけど、精神的なサポートはとても大きい」と感謝。来年には第1子が誕生予定。「妻の体調もサポートしないといけない。子どものためにも2人で力を合わせたい」と強い思いで土俵に上がっている。

賜杯の行方はまだまだ分からない。「1日一番。しっかりベストを尽くすだけ」と高安。無心で走り続けた先に、トップの景色が見えてくる。【佐々木隆史】