稀勢の里綱とりへ9連勝 白鵬と早くも一騎打ち

懸賞金を手に土俵を下りる稀勢の里(撮影・中島郁夫)

<大相撲夏場所>◇9日目◇16日◇東京・両国国技館

 高いレベルでの優勝なら綱とりの可能性がある大関稀勢の里(29=田子ノ浦)が、1敗の大関豪栄道を送り出して無傷の9連勝を飾った。今場所から大きく変わった所作と心で、横綱、大関戦の最初の一番を白星で発進した。横綱白鵬も関脇勢を押し倒して全勝を守った。横綱日馬富士も敗れたために1敗力士が消えて、優勝争いは早くも一騎打ちの様相を呈してきた。

 館内の空気を一変させる強烈な音が、取組前に響いた。呼び上げられたのち、土俵に上がって行う塵手水(ちりちょうず)。静かなそんきょの姿勢から、手を開いてかしわ手を打つ。その勢いがすさまじい。静から動へ。今場所から見せる稀勢の里のスイッチだった。

 最初の上位戦を前に「動」に切り替わった心は、冷静かつ力強かった。1度目の立ち合いで突っかけとなっても「変わらずに」とひるまない。2度目で豪栄道に左をねじ込むと、確かな下半身で前へ寄る。土俵際、相手の捨て身の首投げも「何回もやっていますから」と首を引っ込めて食わない。2場所続けて優勝争いに加わる大関を軽々と、土俵外へと押しやった。

 8日目を終えて、横綱と2人だけ全勝で並走する経験は11年秋以来。当時は9日目から3連敗した。重圧をふりほどけなかった。

 あれから5年。幾度も苦い経験を味わってきた今の姿には、重圧と無縁かと思わせるゆとりが漂う。14年初のケガ以降、出番前には右足の親指と人さし指にテーピング。先場所までは気になると巻き直していた場面が、1度もない。準備に慌てる付け人を見ると「何、焦ってるんだよ」と笑い飛ばす。「今も神経質だよ」と笑うが「気にしない」心が備わっている。

 白鵬も全勝を譲らない。だが、今の稀勢の里に競う相手の姿は気にならない。「1日1日が勝負です。集中してやるだけ」。上位との取組が続く勝負の後半戦が始まった。【今村健人】