鶴竜5敗目、37年ぶりの不名誉で休場促す声も

玉鷲(手前)に突き出しで敗れる鶴竜(撮影・野上伸悟)

<大相撲初場所>◇10日目◇17日◇東京・両国国技館

 横綱鶴竜(31=井筒)が苦しい5敗目を喫した。関脇玉鷲の激しい突き、押しに防戦一方。一方的に突き出された。不戦敗を除いて10日目までに5敗を喫した横綱は、80年名古屋場所の三重ノ海以来37年ぶりの不名誉な記録となった。

 今場所は東の支度部屋の最も奥に、鶴竜の“席”がある。そこは東の正横綱の定位置。国技館で初めて座ったそこまでの距離が、今は遠く感じた。横綱、大関戦を前にした10日目で5敗目。80年名古屋場所の三重ノ海以来37年ぶりの屈辱に、入り口近くにある風呂場から戻る足取りは、重たかった。「相手を受け止め切れていないですね。自分の相撲を取り戻したい」。大きなため息が交じった。

 完敗だった。玉鷲ののど輪で上体を起こされると、何もあらがえない。ただズルズルと後ろに下がり、粘る腰もなかった。わずか3秒3。14年ほど前に偶然、部屋の前を通りがかったことで入門のきっかけをつくってあげた玉鷲に、あっけなく突き出された。先場所の優勝横綱の面影は、まるでなくなっていた。

 あまりにふがいない内容に厳しい声が飛び交った。前日と同じあっけない相撲に、八角理事長(元横綱北勝海)は「横綱として負け方が悪すぎる。気力のない相撲を取っちゃダメだ」。土俵下から取組を見守った友綱審判部副部長(元関脇魁輝)は「後は本人が責任の持ちようをどう考えるか。出てきたら期待される。それができないなら体調を整えるのも手かなと思う。これから横綱、大関戦。水を差すような相撲は…」と言葉を濁しながらも、状態次第で休場もうながした。

 「しっかり反省しなきゃいけない」と話した鶴竜は帰り際、明日以降も出場するかと問われると「はい」と答えた。ただ、4日目から崩れた相撲をまだ直しきれない。連覇の夢が一転し、99年秋場所の若乃花以来となる皆勤負け越しの恐れも出てきた。【今村健人】

 ◆横綱の10日目終了時の5敗 休場による不戦敗を除き、相撲を取って5敗を喫したのは、80年名古屋で9日目で5敗して10日目から休場した三重ノ海以来37年ぶり。横綱6場所目だった三重ノ海は、初日に西前頭筆頭天ノ山に敗れると、5日目に関脇琴風、6日目に平幕千代の富士に連敗。さらに8日目に関脇朝汐、9日目に平幕黒瀬川に敗れ、10日目麒麟児戦は不戦敗となった。翌秋場所は全休し、九州場所で初日から連敗後に引退している。