素直で真面目で頑固…父が話す稀勢の幼少時代/連載

小学生に歓迎され笑顔を見せる稀勢の里(撮影・鈴木正人)

<誕生 横綱稀勢の里2>

 「萩原家」では、子どもにテレビのチャンネル権はなかった。「絶対に持たせませんでした」と父貞彦さん。土日は必ずゴルフからの大相撲中継。稀勢の里は物心ついたときから相撲を見る習慣がついていた。不器用で武骨、愚直…。昭和の力士の薫りが色濃く漂う姿はここから形成された。

 父はわが子の性格を「良く言えば素直、真面目。悪く言えば頑固」という。

 昔から神さまやお化けという「特別な存在」を言い聞かせられた。「神さまは見ている」「うそつくと罰が当たる」。小学生の時だった。求められたことを確認されて「やった」と答えた。でも「神に誓うか」と聞かれると「誓わない」。分かりやすかった。

 風邪をひくと、医師から漢方を勧められた。子どもには苦い。それでも「飲まないと治らない」と言われると、飲み続けた。父が「もういいぞ」と言っても「父さんは医者じゃないでしょ」とかたくなだった。

 稀勢の里は言う。「信じやすいタイプなんです。(人類滅亡を予言したとされる)99年7月の『ノストラダムスの予言』なんて、信じて震えていたから。地球が終わっちゃうと(笑い)」。自分が信じた道は疑わない。そこにブレがない。

 小学6年のわんぱく相撲の茨城県大会決勝。前の試合で足首を痛めて、周囲からは変化や引き技を勧められた。「いやだ」と突っぱねて真正面からぶつかり、負けた。そういう男。今、少年時代から少しも変わっていない。【今村健人】

※明日からは、歴代担当記者が稀勢の里を語ります。