稀勢の里が熱狂パレードに誓い、地元茨城の魅力発信

牛久市でパレードを行い、沿道に笑顔で手を振る稀勢の里(中央)(撮影・鈴木みどり)

 大相撲の新横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)が18日、地元の茨城県牛久市で祝賀パレードを行った。“おらが村”の横綱を一目見ようと、人口約8万5000人の牛久市に約5万人の観客が集結。警察や市職員ら約600人が警備にあたるほど大パニックとなった。大観衆を前に、新横綱は「都道府県魅力度ランキング」で4年連続最下位の茨城県を、自らの相撲で盛り上げていくことを誓った。

 見慣れた光景が、まるで違っていた。JR牛久駅前から牛久市役所まで約1キロの道のりを、市の人口の6割にあたる約5万人が埋め尽くした。オープンカーに乗った稀勢の里は「たくさんの方にびっくり。牛久の活気ある雰囲気が最高でした。いつも通っている道の雰囲気が、全く違う。本当にうれしい」と感激した。

 「横綱!」「日本一!」の声が飛び交い、3階建ての屋上に立つ人や手書きのメッセージを掲げる人たちの姿があった。その1つ1つに目を凝らした。小学生時代に所属した野球チームの監督や後輩たちも駆けつけていた。「うれしいですね、そういう昔の方々に来ていただけるのは」。懸命に手を振っていた。

 「いつも牛久の皆さんには助けられてきましたから」。パレードも含めた地元への特別な思い。そのために自らが“広告塔”となる覚悟も示した。

 民間調査会社が行う「都道府県魅力度ランキング」で、茨城県は昨年まで4年連続最下位。

 「それは少し気になっていた。茨城にはいいところがたくさんある。少しでも多くの魅力を伝えて、どんどん順位を上げていきたい。牛久大仏とか牛久の良さも伝えて、茨城を盛り上げていく」。そして茨城の女性と結婚してと願うファンには「茨城の人はすてきな女性がたくさんいる。もしそうなればいい」と笑った。

 パレード後は、88年ソウル五輪男子レスリング金メダリストの小林孝至氏以来、29年ぶり2人目となる牛久市民栄誉賞も受賞した。その授賞式では記念メダルのひもが短く、大銀杏(おおいちょう)に引っかかって入らなかった。すると、母裕美子さん(62)の首にかけて大喝采を浴びた。

 そんな機転を利かせられる新横綱の活躍が、地元の何よりの発信力になる。春場所(3月12日初日、エディオンアリーナ大阪)に向けて「今は10代より体も元気。しっかり稽古して、1つでも多く優勝したい」と約束した。【今村健人】

 ◆都道府県魅力度ランキング 民間シンクタンクのブランド総合研究所(本社・東京)が毎年行っているもので、16年で11回目。47都道府県と1000の市区町村を対象に「魅力的だと思うか」と5段階評価で尋ね、インターネットで全国の20~70代の男女約3万人が回答した結果を点数化する。16年は、都道府県では北海道が8年連続1位で、茨城県の最下位は4年連続。市区町村では、函館市(北海道)が3年連続で1位。

 ◆大相撲の主なパレード 最近では豪栄道が昨秋、地元大阪府寝屋川市(人口約24万人)で行った際に約2万2000人が集結。琴奨菊が部屋のある千葉県松戸市で行ったパレードは人口約49万人のところ約5万5000人、地元福岡県柳川市(人口約7万人)で行った水上パレードには約10万人が集まった。99年初場所で初優勝して大関昇進を決めた千代大海は、大分市初のパレードで人口44万人の3分の1の約15万人に祝福された。97年九州場所で2度目の優勝を飾った貴ノ浪は、故郷青森県三沢市で人口約4万3000人に匹敵する4万人が集まった。