兄「ラオウ」敗れても弟「ケンシロウ」高安は好発進

大栄翔(手前)を、はたき込みで破る高安(撮影・鈴木正人)

<大相撲夏場所>◇初日◇14日◇東京・両国国技館

 16年九州場所以来、2度目の大関とりの関脇高安(27=田子ノ浦)が、東前頭3枚目の大栄翔をはたき込みで下し、新大関へ1歩踏み出した。1年ぶりの対戦で持ち前の突き押しで圧倒。場所前に追手風部屋への出稽古で相撲を取ったこともプラスになった。

 高安は立ち合いでかち上げ気味にぶつかって距離を取り、激しい突き押しで大栄翔の首元を攻め立てた。突き押しが得意な相手を防戦一方にさせ、懐に飛び込んできたところを右に体を開きながらはたいた。「前でしっかりと踏み込んで、突いて前に出られたので良かった。初日が肝心ですから」と満足した表情で話した。

 対策はすでに練られていた。高安は突き押しを得意とする相手が苦手で、克服のため場所前に追手風部屋へ出稽古。突き押しが自慢の大栄翔と胸を合わせていた。この日の取組後には「相手どうこうというよりは自分の相撲を取るだけ」と気にするそぶりは見せなかったが、良いイメージは脳裏にあったはずだ。

 さらに時津風部屋での出稽古では横綱鶴竜と、二所ノ関一門の連合稽古では横綱白鵬と胸を合わせた。「得た物はたくさんあった。いい勉強」と充実の内容。けがの影響があった兄弟子の横綱稀勢の里とは部屋で一緒に稽古をすることはかなわなかった。しかし、他の2横綱から吸収していた。

 大関とりのボーダーラインとなる10勝まで、あと9勝。「今日勝ったことで明日良いイメージできます」。兄弟子のまさかの黒星にも、気にすることなく突き進む。【佐々木隆史】

 八角理事長(元横綱北勝海)の話 高安は自信に満ちた相撲。思い切って突っ張るより安全に勝ちたいと思いがちだが、思い切りが良かった。(場所後の大関昇進を)やってくれそうな予感がある。

 ◆「北斗の拳」懸賞旗に歓声 当日券を求めて長蛇の列ができた国技館は、午前8時5分に完売を意味する「札止め」となった。売店でも「普段の2倍の量にした」という稀勢の里弁当は瞬く間に完売。漫画「北斗の拳」のラオウの化粧まわしで土俵入りを行った稀勢の里には「日本一!」の声。ケンシロウの太刀持ち高安、トキの露払い松鳳山の取組では各人が締めたキャラクターの懸賞旗が土俵を1周、館内を盛り上げた。