千代の国、負傷、三段目陥落…地道なリハビリで金星

初金星を挙げた千代の国は懸賞金を手に笑顔でガッツポーズ(撮影・小沢裕)

<大相撲夏場所>◇2日目◇15日◇東京・両国国技館

 東前頭筆頭千代の国(26=九重)が、結びの一番で横綱鶴竜(31=井筒)を引き落としで破って初金星を挙げた。12年初場所で新入幕を果たしたが、両膝の半月板損傷など度重なるケガで15年春場所には三段目まで落ちた。幕内から三段目まで落ちて再入幕を果たした力士としては史上初の金星獲得となった。

 千代の国が初めての結びの一番で、大仕事をやってのけた。取組前には顔を両方の手のひらで3度たたいて気合を注入。立ち合いでぶつかり、体を引きながら右に開くと、鶴竜が前のめりにバッタリと倒れた。初金星に「ちょっとゾクゾクしました。すごく鳥肌が立ちました。本当にうれしいです」と興奮を抑えられない様子だった。

 ここまで順風満帆ではなかった。12年初場所で21歳で新入幕を果たした。だが、14年秋場所で両膝の半月板損傷の大けがを負った。2場所連続で全休を余儀なくされ、15年春場所で三段目まで陥落した。稽古のためのテーピングをするだけで1時間半かかった時期があった。タイヤのゴムチューブ6本で膝を固めて稽古する時もあった。それだけに喜びもひとしおだった。

 地道なリハビリと稽古ではい上がってきた苦労人は「しっかり前向きに頑張ってきてよかった」と感慨深げ。17本の懸賞金(手取り51万円)の使い道を聞かれると「このあと治療の予約があるので。それから考えます」と笑顔を見せた。今日3日目は、まだ金星配給のない横綱稀勢の里戦。この勢いで2日連続金星をもぎ取る。【佐々木隆史】

 ◆千代の国憲輝(ちよのくに・としき)本名沢田憲輝。1990年(平2)7月10日、三重県伊賀市生まれ。柔道で東海大会個人3位などの実績を残した名張北中を卒業した06年に九重部屋に入門し、夏場所初土俵。11年名古屋場所で新十両、12年初場所で新入幕。15年春場所には三段目まで陥落。16年名古屋場所で再入幕。約7年間交際した元会社員の愛夫人と4月に結婚。182センチ、140キロ。通算339勝242敗93休。

 ◆復帰金星 明治以降、幕内から三段目に陥落し再入幕を果たしたのは騏乃嵐(前頭2枚目→三段目25枚目→前頭8枚目)、土佐豊(前頭筆頭→三段目84枚目→前頭16枚目)、千代の国(前頭8枚目→三段目28枚目→前頭筆頭)の3人。騏乃嵐の金星1は陥落前で、土佐豊は金星がなく、千代の国は再入幕後初の金星獲得となった。