高安、大関とりへ「気分よく」昇進確率100%に

立ち合いで遠藤(手前)をかち上げた高安は、勢いに乗って力強く攻め立てる(撮影・丹羽敏通)

<大相撲夏場所>◇5日目◇18日◇東京・両国国技館

 大関とりに挑む関脇高安(27=田子ノ浦)が、昇進確率100%のデータを手にした。前日に兄弟子の横綱稀勢の里を破った西前頭筆頭の遠藤を、危なげなく寄り切り。序盤を無傷で乗り切り、大関昇進の目安となる三役での直近3場所33勝に必要な10勝へ、あと「5」とした。初日からの5連勝は自身7度目で、過去6度はいずれも2桁勝利。場所後の大関昇進が見えてきた。

 突いて良しだが、組んでも良い。それが高安の持ち味。今場所初めての寄り切りには、相撲巧者の遠藤を上回るうまさが光った。大関とりの場所で、序盤を無傷の5連勝。「毎日、気分よく取れています」と話す姿には風格が漂っていた。

 14本の懸賞に加えて、ファン投票で決まる森永賞も懸かった注目の一番。大関豪栄道すら圧倒した立ち合いは互角だった。「はじき飛ばそうと思ったけど(遠藤の)踏み込みが鋭くて、起こしきれなかった」。だが、その後が巧みだった。左を深く差して下手を引き、相手の下手は右のおっつけで切る。「手順良く前に出られた。自分もしっかり踏み込めているから、流れがありましたね」。前日の兄弟子のかたきを取った。

 自らの目で見てきた数多くの景色。それが今の高安を彩っている。初めての大関とりだった昨年九州場所は7勝8敗と失敗した。それでも「入門した当時の自分から考えたら、大関に挑戦していることが考えられない。夢の中にいた感じがする。またいい景色が見れた」。気持ち新たに挑んだ翌場所から11勝、12勝。その間、稀勢の里の優勝パレードでは旗手を務めた。車から見えた景色もまた、いいものだった。「優勝っていい。稀勢の里関になりたいと思った」。目の前にある横綱の背中を追った。

 今場所前はその横綱のけがでいつもの三番稽古ができず、連日出稽古になった。だが「いろんな力士と肌を合わせられるので、これも良い機会だと思った」。稀勢の里が出稽古し始めると、必ずついていったこれまでと異なり、あえて違う部屋に出向いた。「自分でたくさん稽古したかった」。独り立ち。横綱がいない景色の中で、力を蓄えた。

 初日からの5連勝は7度目。過去6度はいずれも2桁を挙げた。昇進目安となる33勝は今場所10勝で届く。「大関」の景色はすぐそこに迫ってきた。だが、今の高安が見るのは星数でなく、全勝での優勝。3人だけの勝ちっ放しに「持てる力をしっかり出して、前向きな相撲を取りたい」。太刀持ちを務める稀勢の里の土俵入りで、北斗の拳の主人公ケンシロウの化粧まわしを着ける。ケンシロウは兄ラオウを超えた。高安も、その景色を追い求める。【今村健人】