白鵬V起爆剤「それを聞いて体“カーッ”って熱く」

序の口優勝した付け人の炎鵬(左)とVサインを重ね、ダブル優勝を喜ぶ白鵬(撮影・狩俣裕三)

<大相撲夏場所>◇14日目◇27日◇東京・両国国技館

 横綱白鵬(32=宮城野)が、16年夏場所以来1年ぶりとなる、38度目の優勝を果たした。勝てば優勝が決まる一番で、大関照ノ富士を寄り切った。昨年の秋場所を右足親指の手術で全休するも、九州場所では調子が戻らず。今年は、2場所連続優勝した新横綱稀勢の里に主役の座を奪われていた。4月にモンゴルで体を鍛え上げ、食生活も見直して復活優勝。名古屋場所(7月9日初日、愛知県体育館)で、魁皇の歴代最多1047勝超えに挑戦する。

 白鵬は右を差したが、互いに上手を取られるのを嫌い、土俵中央でもみ合った。互いに攻めあぐねる中、最後は白鵬が強引に左を差して寄り切った。待望の瞬間に思わず、照ノ富士の胸を一押しした。今場所、自身最長の36秒4で決着。支度部屋に戻ると、カメラのフラッシュを浴び「やっぱりうれしいもんですよ」と笑顔。初制覇以降で自身最長の5場所も優勝から遠ざかっただけに「長かったという感じ。(優勝は)全部が特別だけど、今回は一味違う。32歳になっても努力すればというのを見せつけたのかな」とかみしめた。

 新横綱から刺激を受けた。春場所を5日目に途中休場するも、帰京せずに大阪に残った。宿舎で見たのは、左上腕付近を負傷しながら2場所連続優勝した稀勢の里の勇姿だった。「次は自分の番という気持ちにならないといけない」と優勝への欲が出た。そして「ある人から言われたけど、横綱で30以上の優勝は3人いるけど40は誰もいない。それを聞いたときに体が『カーッ』って熱くなりましたね」。大横綱のスイッチが入る瞬間だった。

 春場所の途中休場からほどなく、師匠の宮城野親方(元前頭竹葉山)と2人っきりで話し「昔みたいに鬼みたいな気持ちにならなきゃだめだ」と厳しい言葉をかけられた。その後、4月にモンゴルに帰国すると約1週間、軍隊式トレーニングで徹底的に体を鍛えた。親方も「後半になってどんど良くなっている」と好調ぶりにうなずいた。

 今場所は食生活も改善した。普段なら夜は外食が多いが、栄養バランスを考えて部屋に戻り食事を取っている。そして、必ず1時間マッサージを受けて帰宅しているという。「千秋楽が終わって美酒を飲むまでは」と酒も断っていた。13回目の全勝優勝まであと1つだが「帰ったらゆっくり休みたいですよ」と笑顔。今は、1年ぶりの歓喜に酔いしれる。【佐々木隆史】