稀勢の里TV企画クイズで「違いが分かる横綱」称号

正解の東を指して、見事に高級ワインを見極めた稀勢の里(後方)。前方は白鵬(撮影・今村健人)

 左上腕付近の負傷で夏場所を途中休場した大相撲の横綱稀勢の里(31=田子ノ浦)が6日、名古屋場所(9日初日、愛知県体育館)の出場を明言した。名古屋市のCBCホールで行われたテレビ番組収録を兼ねた前夜祭後に、自らの口で語った。その前夜祭では白鵬ら8人の力士で「質」を見極めるクイズに挑み、平幕正代と2人だけ、最高位の横綱を獲得した。土俵外でも“一流”を証明した。

 決意を語る表情は、どこかうれしそうだった。直前の前夜祭で「違いが分かる横綱」の称号を得た。稀勢の里は自らの状態も見極めて「昨日バシッとはまった。体はずっと良くて、あとはバランスが問題だったが、非常にいいバランスだった」と出場を明言した。

 「左大胸筋損傷、左上腕二頭筋損傷」で途中休場した夏場所から1カ月半。元々、出る気持ちで名古屋入りし、稽古を積み重ねてきた。ただ、二所ノ関一門の連合稽古で精彩を欠いた。

 見え隠れする出口をようやく探し当てたのが、10戦全勝した高安との前日の稽古だった。「土俵の中でいい感覚になってきた」。その夜「絶対に出る」と決めた。心が固まれば視線は本場所へ。体調を見極めて、この日は稽古を休んだ。

 そんな“眼力”の鋭さは前夜祭に表れた。白鵬ら3横綱と高安、御嶽海、嘉風、正代の8人で臨んだ、質を見極めるクイズ。最初の10万円と3000円のワインの味の違いで「古い味がした。古い方が高いかな」と分析してみせると、続く松阪牛ではなく飛騨牛を当てる問題でも「(松阪牛は)非常に脂が多く、こっちの方があっさり」と正解。30万円と10万円のニシキゴイの違いも外さなかった。

 クイズとはいえ、真顔で臨んだ勝負の場。ここまでで全問正解は稀勢の里と御嶽海だけ。4問目の高級バイオリンの音色で間違えて“降格”したが、劇的な結末は最終問題にあった。

 名古屋場所でまく塩と市販の塩。手に取り、舌でなめたこの見極めは誰もが簡単とうそぶいた。いざ解答。すると選んだ塩は、触れず直感だった正代と2人だけ。残る6人は反対側だった。思わず“やってしまった”と顔をしかめた…が、当たった。「うまみがあったから」とドヤ顔で胸を張る。もっとも、司会のデーモン閣下の「バンバンまくからマズイ塩なんです」で会場は笑いにつつまれた。

 春場所のような逆転劇で“一流”を証明した横綱は、名古屋も「しっかりやるだけ。なるようになると思う」。次は白星と黒星の相撲の違いを、その体で見極めていく。【今村健人】