北勝富士うれし泣き初挑戦初金星、台頭若手また新生

鶴竜(右)を押し出しで破った北勝富士(撮影・鈴木正人)

<大相撲名古屋場所>◇3日目◇11日◇愛知県体育館

 次代の主役は俺だ! 西前頭2枚目の北勝富士(24=八角)が、横綱鶴竜を押し出しで破り、初金星を挙げた。所要15場所目は年6場所制となった1958年以降で2位タイのスピード記録で、日本出身力士では最速となった。横綱初挑戦での初金星は14年秋場所の逸ノ城以来。同期の関脇御嶽海、平幕宇良の活躍に隠れていたが、一気に注目を集める存在になってきた。

 勝ち名乗りを受けるとき、座布団が1枚足元に落ちてきた。それは大番狂わせが起こった証しだった。北勝富士は土俵下で思わず涙をこぼした。支度部屋に戻っても時折、左目から光るものが流れ落ちた。「横綱戦を夢見てたので。久しぶりにうれし泣きしました」と照れ笑いを浮かべた。

 横綱の当たりにもひるまなかった。低く低く、突き押した。「前みつを取らせないのと引かせることでしか勝機がない」。鶴竜が嫌って後ろに引いたところを押し出した。狙い通りにも「がむしゃらだったので覚えてないです。早く帰って(相撲を)見直したい」と興奮は冷めなかった。

 地道に続けてきたことが実を結んだ。小学4年から地元の埼玉・所沢の相撲クラブに入った。徹底して言われてきたのは、前みつを取って低く拝むように押す相撲。その教えは今も変わらない。「まわしを取るなと言われている」と師匠の八角親方(元横綱北勝海)から指導があり「低く前みつを取る相撲。体に染みついてます」。ぶれずにやってきたことを横綱初挑戦の一番でも発揮。2位タイのスピード金星を獲得した。

 最大のライバルは同期の御嶽海だ。日体大4年時の全国学生選手権決勝で東洋大4年だった御嶽海に負けた。「今でもたまに夢にでますよ」というほど悔しかった。ともに角界入りし、今年初場所で初対戦したが敗れ、2度目となった今場所2日目も土をつけられた。番付でも常に先を走られ「早く追いつきたいし、追い越したい」と対抗心を燃やす。一方で「一緒に相撲界を盛り上げていきたい」と刺激にもなっている。宇良も含め、15年春場所初土俵の同期で世代交代を推し進めるつもりだ。

 この日手にした懸賞は4本。使い道は「師匠に渡します。初めてもらった時は『横綱に勝った時でいいよ』と言われたので、やっと渡せます。親方孝行できますね」と誇らしげに話した。相撲界に新星が現れた。【佐々木隆史】

 ◆北勝富士の師匠・八角理事長(元横綱北勝海)の話 北勝富士は、自分十分でなく相手を不十分にさせた。その意味ではいい相撲。師匠としてはうれしいが達成感があったら大間違い。その気になられたら困る。まだ全てが足りないし、もっと自覚してやらないと駄目。

 ◆北勝富士に金星を許した鶴竜の話 (右足をひきずりながら支度部屋に戻り)自分で退いてしまった。最悪。もったいない? まさにそうです。(右足で)変な残り方をして。冷やせば大丈夫と思う。