御嶽海が白鵬止め座布団ひらひら、浅田真央さん驚愕

白鵬(左)が敗れる番狂わせで場内に飛び交った座布団がぶつかり、驚く浅田真央さん(中央)。同右は小塚崇彦さん(撮影・岡本肇)

<大相撲名古屋場所>◇11日目◇19日◇愛知県体育館

 新関脇御嶽海(24=出羽海)が、大記録目前の横綱白鵬を止めた。右上手を離さずに、寄り切り。今場所2人目の横綱撃破で、勝ち越しを決めた。初黒星の白鵬は、元大関魁皇と並ぶ歴代最多の通算1047勝が持ち越しとなった。

 頭上を飛び交う無数の座布団に、御嶽海は酔いしれた。「久々だなぁ」。大記録達成の瞬間を待ち望む空気が一変。押し相撲の力士が白鵬を寄り切った。まさに番狂わせ。観客は狂喜乱舞した。その表れの座布団に「今までで一番多く舞ったんじゃないですか」。そう、それだけのことをしてみせた。「いや~、うれしい。今までで一番うれしい」と何度も顔が緩んだ。

 初めて対戦した1年前の名古屋場所の経験が生きた。当時は左ほおを張られて、予想と違う左四つで一気に寄り切られた。

 今回もまた右張り手が飛んできて左四つになった。「自分の右に変化すれば右を差して持っていこうと思っていた。でも、張られた瞬間、状況が全部変わった」。一瞬の戸惑い。だが、瞬時に1年前が頭をよぎった。同じ-。ためらわずに右上手を握った。「止まらずに出ないと勝てない」。

 体が動いた。出し投げを打って体が入れ替わると、ひたむきに前へ出た。外掛けを食らおうとも、命綱の上手は離さなかった。4横綱の中で1人、土俵上での勝ちがなかった白鵬を倒して勝ち越した。「また1つ自信になった」と喜んだ。

 歴代最多の1047勝に挑まれた。その意識は実は「全然なかった」。だから心が冷静だった。「横綱の緊張が伝わってきました。オーラや感覚で。毎場所やっているから分かる。思い込みかもしれないけど」。

 朝、白鵬の存在についてこうも話していた。「人気が落ちたときも上がってきたときも、1人で相撲界を支えてきた。(その意味で)ほぼ日本人です。だからこそ何が何でも勝つという姿勢を見せる。そこは見習いたい。いい相撲でも勝たないと意味がないんです」。その横綱の強さの源と見た「気持ち」で上回った。

 「ちょっとでも記憶に残ればいいですね」。大記録を、すぐには決めさせなかった男。御嶽海は、後世にそう残る。【今村健人】

 ◆八角理事長(元横綱北勝海)の話 白鵬は左を差して少し安心したのか。(記録への影響は)楽しみが先延ばしになった、ぐらいの気持ちだろう。御嶽海は、出し投げ気味に投げてうまく回り込んだが、あの展開は本人も思ってもみなかっただろう。優勝争いという意味では大殊勲だ。

 ◆幕内後半戦の藤島審判長(元大関武双山)の話 御嶽海は今までの対戦を踏まえてうまく考えて取った。立ち合いの変化はやめて前に出る相撲を続ければ、関脇以上が見えてくる。白鵬は、記録への意識はあまりないのではないか。意識するとすれば優勝の方でしょう。