トップ豪栄道2敗、19年ぶり大混戦演出しちゃった

豪栄道(左)ははたき込みで松鳳山に敗れる(撮影・小沢裕)

 優勝争いトップを走る大関豪栄道(31=境川)が、大混戦を演出してしまった。東前頭4枚目松鳳山にはたき込まれ、2敗目を喫した。自力優勝には「残り3日で2勝」と優位さに変わりはないが、4敗は現在10人。3横綱2大関休場の秋場所が、最後にまた荒れ始めた。

 朝乃山、貴ノ岩、千代大龍の3敗力士3人がそろって負けた。一時は後続との差が2差から3差に開いたが、豪栄道も負けた。松鳳山戦。立ち合いが2度合わず、3度目で立つと、激しい突き押しの応酬になった。左ほおを2度張られ、はたきにいったが、最後は逆にはたき込まれた。

 勝てば、あと1勝で優勝と絶対的優位に立てた一番だった。支度部屋で、右肘に血をにじませながら、言葉少なだった。「う~ん、しっかり当たらないとダメやね」。後手に回ったかと問われて「そうですね」とつぶやいた。八角理事長(元横綱北勝海)は「安全に、勝ちたい気持ちが強すぎたかな。勝てば(優勝が)ほとんど決まりの一番だから、余計に大事と思ったんだろう」と心中を推察した。

 残り3日、後続とは2差のままで、2勝すれば自力優勝できる。ただ2敗すれば、話は別。2差の4敗力士は10人もおり、今後の展開次第で大逆転Vへ、息を吹き返す。新入幕の朝乃山、前半に走った阿武咲、人気者の遠藤、元大関琴奨菊、4連敗から8連勝の嘉風、横綱日馬富士らのうち、千秋楽まで4敗を守った力士による優勝決定戦に巻き込まれる。

 この日は通算出場1000回の節目だった。「そういうのは、今は別にどうでもいい」。残り3日に向けた心境を問われ「気にせず自分の相撲をとることだけを心掛けていきます」と、ほぼ同じフレーズを繰り返し、帰りの車に乗り込む間際に一言こぼした。「攻める気持ちが大事やね」。自分のせいで生まれた混戦模様は、自分の力で制するしかない。【加藤裕一】

 ◆12日目終了時点 単独トップの力士が後続に2差をつけたのは、平成以降で今回が31例目。過去30例のうち、逆転されたのは05年秋の琴欧州(優勝は朝青龍)と99年初場所の若乃花(優勝は千代大海)の2例だけ。データでは豪栄道の優勝確率は93%となる。

 ◆12日目終了時点の混戦 1場所15日制になった49年(昭24)夏場所以降、優勝争いでトップと後続が11人以上いたのは、今場所で6例目。そのうち5例は複数人がトップに立ち、後続との差は1。今場所のように単独トップ-後続と2差の例とピタリ合うのが1例だけある。98年初場所で大関武蔵丸が10勝2敗で単独トップ。後続は4敗の横綱貴乃花ら10人。武蔵丸は14日目に敗れたが1差の12勝3敗で逃げ切った。

 ◆幕内後半戦の山科審判長(元小結大錦)の話 豪栄道は立ちづらそうだった。松鳳山のようなタイプは嫌なんだろう。今後の優勝争いの展開? 分かりません。