日馬富士への処分決定は越年も 捜査協力を最優先

14日、謝罪のために貴乃花部屋を訪れた伊勢ケ浜親方(第63代横綱・旭富士=右)と横綱日馬富士

 大相撲の横綱日馬富士(33=伊勢ケ浜)による暴行判明から一夜明けた15日、日本相撲協会の処分決定が年明けとなる可能性が出てきた。被害を受けた平幕貴ノ岩(27)の師匠貴乃花親方(元横綱)が鳥取県警に被害届を提出。日本相撲協会は警察への捜査協力を最優先することを確認し、独自組織の危機管理委員会による調査を後回し、身動きが取れない状態となった。26日まで開催される九州場所後も、12月17日までの冬巡業で九州各地を回るなど、危機管理委員会による調査も滞り、長期化するのは必至だ。

 日馬富士が、処分未定のまま年越しを迎える可能性が出てきた。ある相撲協会幹部がこの日「警察よりも出しゃばるわけにはいかない」と、危機管理委員会による調査よりも、鳥取県警の捜査を最優先とする方針であることを明かした。

 同県警は15日に現場となった飲食店など関係者の事情聴取を始めたことが判明。傷害容疑で捜査し、日馬富士の聴取時期などを検討している。だが、九州場所後も巡業や来年初場所の番付発表、年末年始を控えて各部屋で行事がめじろ押し。危機管理委員会による調査の進め方を決められる状況に至っていないのが実情だった。

 何よりも相撲協会としては、日馬富士による貴ノ岩への暴行現場に居合わせた力士の特定に至っていないとあって、先行きは不透明となっている。当事者2人に加えて白鵬、鶴竜の両横綱、照ノ富士ら10人程度が同席したとされるが、酒席での記憶をたどる調査だけに、参加者すべての証言が一致するとは限らない。別のある親方は「警察は捜査情報を教えてくれるわけではない」と、これまでにも警察が関与する不祥事を経験し、独自に日馬富士の処分を決める材料を集める必要があると説明した。

 この日、日馬富士は早朝に帰京。相撲協会幹部はこのことを、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)から危機管理部長の鏡山親方(元関脇多賀竜)経由で事後報告された。その後、同日夜に福岡・太宰府市の部屋に戻ってきた。今後も予想外の動きが起きた場合を懸念し、すでに前日14日には春日野広報部長(元関脇栃乃和歌)は、今月中に処分が決定するか問われると「今場所が11月26日までなので、そこから4日以内というのは現実的に難しい」と、処分決定は12月以降との見通しを説明していた。

 また、横綱審議委員会の北村委員長は前日14日に「協会の厳しい処分を求めることになるだろう」と話していた。相撲協会に関わる外部の有識者からの声も反映させる必要がある。貴乃花親方は「被害届を取り下げるつもりは、今のところない」と話しているという。

 ◆日馬富士の暴行問題経緯 秋巡業中の10月26日未明、鳥取市内での酒席で会話中に同じモンゴル出身の貴ノ岩がスマートフォンを見たことで怒りを爆発させた。何度も頭部を殴ったとされ、13日に公表された診断書は「脳振とう、左前頭部裂傷、右外耳道炎、右中頭蓋底骨折、髄液漏の疑い」だった。貴乃花親方は10月29日に鳥取県警に被害届を提出。日本相撲協会には11月2日に同県警から連絡が入った。14日に暴行発覚後、日馬富士は謝罪して同場所を休場した。