日馬富士、年内にも書類送検 貴ノ岩はスマホ没収か

福岡行きの航空機に搭乗する日馬富士(撮影・野上伸悟)

 大相撲の横綱日馬富士(33=伊勢ケ浜)が、平幕貴ノ岩(27=貴乃花)に暴行した問題で、鳥取県警が年内にも、傷害容疑で書類送検する方針を固めたことが21日、捜査関係者への取材で分かった。県警は日馬富士が、逃亡や証拠隠滅の恐れがないことなどから、逮捕はせず捜査を進める判断をしたもよう。実態解明が進む中、日馬富士はこの日、福岡・太宰府市に構える九州場所の伊勢ケ浜部屋に戻った。

 2日ぶりに公の場に姿を見せた日馬富士は、終始無言だった。東京・羽田空港を出発する際はわずかだった報道陣が、福岡空港に到着した際には、あふれ返っていた。暴行問題発覚から1週間。事態は新たな展開を迎えた。日馬富士に対し、鳥取県警は、年内にも傷害容疑で書類送検する方針を固めた。

 10月下旬に鳥取市内のラウンジで起きた暴行について、県警の事情聴取に応じた日馬富士は「素手やカラオケのリモコンで殴った」と説明している。一方の貴ノ岩は事情聴取で殴られた際に「目をつぶっていた」と、当時の様子は全ては分からないと証言している。一部から証言の出ている、日馬富士がビール瓶や、ビール以外のアルコール類の瓶で殴打したかどうか、ラウンジの個室で既に現場検証が実施されたことも判明。今後、聴取を行う横綱白鵬ら同席者の証言、室内にいた9人の座っていた場所などと照らし合わせて検証、分析し、詰めの捜査を進める。

 県警はこの日、福岡市内で現場のラウンジで同席していた横綱鶴竜と関脇照ノ富士を任意で事情聴取した。日本相撲協会の危機管理委員会は一両日中にも、2人を聴取する見通し。また、貴ノ岩については、県警への聴取には応じたが、危機管理委が貴ノ岩の聴取を要請しても、貴乃花親方(元横綱)が応じていないという。福岡・田川市内の部屋に滞在しているとされるが、詳細は不明。力士だけでなく、日本で生活するモンゴル人コミュニティーの関係者も「一切連絡が取れない。スマホを没収されたのかもしれない」と、頻繁に連絡を取り合っていた以前との違いを明かす。一部証言が食い違ったままなら、県警は当事者の日馬富士、貴ノ岩に再聴取する可能性もある。

 ◆書類送検 送検は警察が検察に事件を送致すること。逮捕し、身柄を拘束する必要がある場合は書類、証拠とともに身柄も検察に送られるが(身柄送検)、拘束の必要がない場合、書類、証拠のみが送られる(書類送検)。検察は起訴するかどうか判断するが、書類送検の場合、簡易裁判所が略式命令を出す略式起訴か不起訴のいずれかになる。元検事の大沢孝征弁護士は「鳥取県警は鳥取地検に書類送検するが、(事件関係者は東京に居住するため)鳥取地検は東京地検に移送することになると思う。東京地検が暴行の内容、傷害の程度を調べることになる。普通は略式起訴で10万~20万円の罰金だが、今回の場合、起訴猶予(不起訴)もあり得る」と話している。