貴乃花親方、協会と完全決裂…協力拒否の真意とは

日馬富士暴行事件相関図

 大相撲の貴乃花親方(45=元横綱)が、日本相撲協会と完全に決裂した。弟子の貴ノ岩(27)への横綱日馬富士(33=伊勢ケ浜)による秋巡業中の酒席での暴行を受けて、九州場所11日目の22日、協会役員室に呼び出された。八角理事長(元横綱北勝海)から、全容解明を目指す協会の危機管理委員会による、貴ノ岩への聴取実施への協力を要請されたが「お断りします」と拒否。当事者から聞き取りのめどがたたず、危機管理委の調査への影響が懸念される。

 

 貴乃花親方が、暴行問題が発覚した14日以来、8日ぶりに相撲協会役員室の扉をくぐった。午後1時25分に入ると、同50分過ぎまでの約25分間滞在した。その間、八角理事長(元横綱北勝海)、尾車事業部長(元大関琴風)、鏡山危機管理部長(元関脇多賀竜)、春日野広報部長(元関脇栃乃和歌)という執行部の重鎮に囲まれた。八角理事長から、弟子の貴ノ岩に危機管理委員会の事情聴取に応じるよう協力を依頼されたが貴乃花親方は「お断りします」ときっぱり。その後も強硬姿勢は崩さず、部長を務める巡業部室に戻った。

 協会は鳥取県警への捜査を優先する方針を打ち出している。日馬富士は17日に県警、19日に危機管理委から聴取された。暴行が起きた10月25日夜の鳥取市内での酒席に参加していた九州場所休場中の力士については、千秋楽を待たずに県警、危機管理委の順で聴取する。同29日に被害届を提出した際、貴ノ岩は県警の聴取に応じているだけに、春日野広報部長は「こっち(危機管理委)もお願いするのは当然。でも『お断りします』ということだった。オレはビックリしたけどね」と振り返った。しかも呼び出したのは「1度ではない」(同部長)と、複数回の要請にようやく応じた末の拒否だと明かした。

 協会の一員でありながら協力拒否という異例の回答の理由については「オレらの口からは言えない」と、貴乃花親方の本意を推し量ることはできないとした。ただ、協会関係者によると警察の捜査を最優先する意向だという。

 貴乃花親方は、前回役員室に呼ばれた14日に「(第三者を)立てなければいけないことになるかも」と、法的措置を示唆していた。さらに「被害届を取り下げるつもりは、今のところない」と対決姿勢も示していた。近い関係者には「本当に何があったか、逆に自分が知りたい。そのために警察に委ねた。何があったかは後で分かること」と話しており、かたくなな姿勢は崩さないようだ。

 今回、貴乃花親方と完全に決裂したことで、協会サイドは今後も貴ノ岩への聴取ができない見通しとなった。当事者からの聞き取りなくして、暴行問題の全容解明は果たせない。真相究明を目指す危機管理委は貴ノ岩に対する聴取を重要視しており、今後も協力を要請していくという。日馬富士の処分決定までの道のりは遠くなりそうだ。