貴乃花親方「急ぐことない」協会サイドと溝埋まらず

日馬富士暴行事件相関図

 大相撲の貴乃花親方(45=元横綱)が九州場所13日目の24日、日本相撲協会執行部から異例の1日2度の呼び出しを受けた。横綱日馬富士(33=伊勢ケ浜)による、弟子の平幕貴ノ岩(27)への暴行問題について、会場の福岡国際センター入り直後と引き揚げる直前、八角理事長(元横綱北勝海)らと話し合ったが、滞在時間はそれぞれ3分、2分程度と短かった。問題の早期解決を目指す協会サイドと、長期化も辞さない貴乃花親方サイドは平行線をたどったままのもようだ。

 会場入りした貴乃花親方は、部長を務める巡業部室へ迷いなく入室した。2分後、部屋を出て再び姿を現すと、向かったのは相撲協会役員室だった。22日も呼び出され、暴行問題の被害者である貴ノ岩への危機管理委員会による事情聴取を要請されながら「お断りします」と拒否してから中1日。午後1時55分に役員室に入室したが3分後に退室。巡業部室に戻った。

 会場から引き揚げる前には再び役員室を訪れた。ゆっくりと胸を張りながら午後5時21分に入室し、今度はさらに短く2分程度で退室。協会執行部から異例の1日2度の呼び出しを受けた。その間、報道陣の質問には答えず無言。打ち出し後、危機管理委員会の鏡山部長(元関脇多賀竜)は「何も進展はない」と話すにとどめた。春日野広報部長(元関脇栃乃和歌)は「何も言えない。いろいろと言ったら大変なことになる」と中途半端な情報公開は混乱を招くと判断した。

 午前中には日馬富士の師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)も役員室を訪れ、約20分間滞在したが、この内容も明かされなかった。

 問題の全容解明へ、暴行現場を管轄する鳥取県警の捜査を優先する姿勢は、協会も貴乃花親方も変わらない。だが、危機管理委への対応は対照的。同委員会は県警の直後に当該者の事情聴取を行ってきた。暴行現場の酒席に同席した横綱鶴竜と関脇照ノ富士も21日に県警、前日23日に都内で同委員会の聴取を受けた。日馬富士も同様に中1日と素早く双方から事情聴取された。

 一方の貴ノ岩は、被害届を提出した10月29日に県警から聴き取りを受けたが、危機管理委との接触は師匠が拒否した。関係者によると、役員室に入室した際に貴乃花親方は「急ぐことではないですから」と話し、全容解明を県警に委ねる姿勢を再び示したという。長期化も辞さない構えで、協会との決裂はさらに浮き彫りとなった格好だ。