横審、日馬富士へ「自発的引退は評価する」会見全文

臨時の横綱審議委員会を終え会見で引退した元横綱日馬富士の暴行問題に関して白鵬と鶴竜へ厳重注意を表明した北村正任委員長(撮影・小沢裕)

 大相撲の元横綱日馬富士関の暴行事件を受けて、臨時の横綱審議委員会(横審)が20日、東京・両国国技館で開かれた。北村正任委員長(毎日新聞社名誉顧問)の会見全文は以下の通り。

 

 臨時の横綱審議委員会ということで、全員出席して意見を交換しました。まとまったことを3つ申し上げます。

1つは、日馬富士は、既に自ら引退を表明しておりますけども、当委員会としても、この暴力事件、傷害事件ということは、引退を勧告するに相当する事案だと。このように判断いたしました。

 第2点、横綱白鵬、横綱鶴竜は現場に同席していながら、事件の発生および進展を抑えられなかった。そのことの責任を軽く見るべきではない。暴力絶滅…協会全体として取り組んでいる暴力絶滅への心構えに徹するように、両横綱に厳重に注意すべきである。そういう進言を致します。

 第3点。これはすでに済んだことではありますけど、先場所の横綱白鵬の11日目の審判に抵抗する姿勢、それから千秋楽のインタビューの内容などについて、その後、協会が厳重に注意しました。そのことは誠に適切な措置だったということを確認いたしました。横審に直接かかわる問題としてはそのようなことです。

 そのほか、横審にとって与えられた課題、直接の課題以外にも、横審というものが相撲協会と世の中を結ぶ1つの大事な中間にある場所であるということから、こういう意見を言った方がいいという話がかなりありました。

 1つは、貴乃花親方のこの間(かん)の言動は、批難に値する。これは横審全員の意見でありました。1人の親方であり、執行部の一員であり、この親方が、執行部のメンバーであることの責任を全く放棄している。これは普通の組織体の中ではあり得ないことであると。こういう意見が出ました。

 それから、もう1つは、この間(かん)に委員会宛てに、あるいは私個人宛てに、相当の量の投書があります。その投書の大部分は、白鵬の取り口についての批判でありました。張り手、かち上げ…これが15日間のうちの10日以上もあるというような、このような取り口は横綱のものとは到底、言えないだろう、美しくない、見たくないという意見でした。このことは横審のメンバーがいろいろな会合などで相撲の話をするときに、ほとんどの人がそう言っているということでありました。白鵬自身の自覚をうながすか…こういうことであろうと思いますが、そのことに向けて協会としても、工夫、努力してほしいと。こういう話がありました。

<代表質問>

 -現場に居合わせた2横綱に厳重注意すべきだと。懲戒処分を求めるような声は

 北村委員長 いえ、厳重に注意すべきであるという風にまとまりました。

 -11月の横審の当時も、厳重注意という意見はあったのか

 北村委員長 そのときはあくまでも中間報告、事実確認の報告。今回も完璧に終わったとは私は思っておりませんけども、ほぼ事実関係が分かってきているのではないか。あれだけの回数、殴られる。大けがをさせられる。それにはそれなりの時間もあったでしょうし、そこに行くまでの経過もあったでしょうし。そのことを考えると、暴力沙汰になることを抑える機会はあった。暴力絶滅ということにもっと敏感であったら、最後は止められたはずだと、こういう判断です。

 -日馬富士について。引退勧告に相当する事案だと。貴ノ岩に聴取できていないが、暴力事実を重要視したか

 北村委員長 その通りです。これだけ、暴力をなくしようということを各方面で努力している中で、全力士の模範となるべき横綱が、こともあろうにけがをさせるような暴力を振るったということについては、やはり重大なことだと判断せざるを得ない。自発的に引退したということを少し評価するとしてもですね、引退勧告はやむなし、そういう重い責任を横綱はとってしかるべきだと、こういうことです。

<一斉質問>

 -厳重注意については、協会に求めるということでいいのか、諮問するということでいいのか

 北村委員長 諮問ではないです。この事件について協会は(が)横綱審議委員会に諮問するんですね?ということは、前回の委員会のときに確認しています、したがって、事件について意見を求められたわけですね。横綱審議委員会としては。したがって、協会に対して、あるいは理事長に対して、こういうことをすべきであると(横審が)進言したということです。

 -横綱については決議をともなわない措置でいいか?

 北村委員長 決議をともなっていると思います。全会一致です。文書にはしておりませんが、そのことを口頭で申し上げました。

 -横綱の不祥事が続いたが、横綱を推挙した横綱審議委員会側としての責任、対策などへの考えは?

 北村委員長 横綱に推挙する要件というのは、「品格・力量が抜群である」となっています。力量の方は場所での成績を見れば分かるわけですが、品性について、日常どういう生活をしているか、稽古場でどうであるか…本場所の土俵上でどうあるかは若干見えますが、そういうことを委員会自身で調査するわけにもいかない。その力量もないし、権限もない。横審の規則によると、品性については、協会が確認した事実に基づいて判断するとなっています。したがって、協会から、この力士を横綱にしたいという諮問があったときに、品性ということについては、協会が判断した上で諮問しているのであろうと。こういうことを前提に「よろしいです。横綱にしてください」というのがあるのであって、今度のようなことがあったからといって、日馬富士が元々、品性がよろしくないというような判断は到底、横審としてできなかったわけです。また日馬富士については、その分、いろんな相撲以外の場でも、立派な人物だったという風に言う人がたくさんいます。こんなことでいいでしょうか。

 -被害者である貴ノ岩についての話しは出たか

 北村委員長 みんな心配しています。このままでは、彼の相撲人生がどうなるんだろうかと。けがの程度も実のところ、はっきりしていませんし、精神的にもどういう負担を負っているか、ということもはっきりしていませんし。心配する意見が多かったですね。なんとかそれを、できないかと、いう意見です。