終わらない泥仕合、貴乃花親方「所用」で即聴取拒否

大相撲の臨時理事会で向かい合う貴乃花理事と八角理事長(手前)(撮影・小沢裕)

 日本相撲協会は20日、東京・両国国技館で開いた臨時理事会で、元横綱日馬富士関の暴行事件を巡る関係者の処分を決めた。暴行が起きた秋巡業の責任者である巡業部長の貴乃花親方(元横綱)への処分は、危機管理委員会の聴取が終わっていないため、先送りとなった。貴乃花親方はこの日の理事会後、危機管理委から事情聴取を要請されたが、所用を理由に断った。28日の臨時理事会で処分が検討されるが、聴取実現の見通しは立っていない。

 貴乃花親方への処分は先送りとなった。巡業部長として巡業中に起きた暴行事件の報告を怠った責任を問われ、処分が科される可能性もあった。八角理事長(元横綱北勝海)は「まだ評価できていないので、次回の理事会までに危機管理委が貴乃花理事の弁明を聞いて処分の判断をする」と説明した。

 この日の臨時理事会は、当初予定より早く約1時間半で終了した。協会執行部は終了直後に貴乃花親方へ事情聴取を要請したが、所用により断られたという。貴乃花親方は胸を張って引き揚げ、車で貴乃花部屋へ戻っていった。

 危機管理委による、被害者の貴ノ岩への聴取は突然実現した。再三の要請を貴乃花親方が断り続け、当初は元日馬富士関の書類送検後にも応じるとしていた。その後、検察の判断を待つと文書で通達して延期。それが一転し、検察の判断を待つことなく、19日に貴ノ岩が聴取に応じるという文書を送っていた。

 高野委員長によれば、貴乃花親方は「貴ノ岩の検察の調べも終わって、検事から、貴ノ岩が調査に応じることについて差し支えないと言われた」と伝えてきたという。ところが、聴取のために設定してきたのは臨時理事会当日の20日午前9時。早期決着を目指す危機管理委は、19日午後7時から約2時間、貴ノ岩を聴取し、報告書を作成した。

 報告書では貴乃花親方について「一切の報告をしなかった」や「全ての理事、監事、協会員、職員が結束して協力していくことを決議したにもかかわらず(中略)拒否した」「これらの対応が及ぼした影響は小さくなかった」など厳しく指摘。横審の北村委員長は「貴乃花親方のこの間の言動は非難に値する」とし「(協会)執行部のメンバーであることの責任を全く放棄している。普通の組織ではあり得ないこと」と続け、全員同意見と明かした。

 貴乃花親方は理事会において、危機管理委のものとは別に自身が持ち込んだ報告書を出席者に配布した。予想外の提出物は、28日に再び行われる次回の臨時理事会で議論するという。貴乃花親方の協会への姿勢は一貫しない。関係者の多くが処分を科され、残るは1人。次回は理事からの降格なども検討される見込みだが、そもそも聴取に応じなければ泥仕合は終わらない。

<理事会で決定した事項>  

◆関係者の処分について 

 ◆元横綱日馬富士関は「引退勧告相当」。功労金は規定の金額から減額を検討。

 ◆白鵬は来年1月の給与不支給。2月は50%減額。

 ◆鶴竜は来年1月の給与不支給。

 ◆伊勢ケ浜親方は理事辞任。役員待遇委員に1階級降格。

 ◆八角理事長は残り任期3カ月の報酬を全額返上。

◆貴ノ岩の救済について 

 来年1月の初場所を全休する場合、診断書を提出すれば、3月の春場所の番付を十両最下位にとどめる。

◆再発防止に向けて 

 再発防止検討委員会の設置。暴力追放宣言の実施。暴力問題を再確認するような日の制定。稽古のあり方の再検討。暴力禁止規定など新しい規定を制定。

◆診断書提出の義務づけ 

 取組編成要領と巡業での規定を一部改定し、本場所、巡業を休場するときは診断書の提出を義務づける。