栃ノ心追い付いた 土俵際飛び1敗キープ、鶴竜並ぶ

栃ノ心(左)は宝富士を突き落としで下し1敗を守った(撮影・小沢裕)

 西前頭3枚目栃ノ心(30)が宝富士を突き落としで下し、10勝1敗とした。押し込まれ、土俵際でもつれて物言いがついたが、軍配通りの勝ち名乗り。結びの一番で横綱鶴竜が玉鷲に初黒星を喫し土がついたため、優勝争いのトップに並んだ。故郷ジョージアにいる愛妻ニノさん(30)長女アナスタシアちゃんを思って燃える男が、名門・春日野部屋では72年初場所の栃東(先代玉ノ井親方)以来46年ぶりとなる賜杯へ、突き進む。

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 宝富士が倒れ込んだ。栃ノ心は両足が宙に浮いていたが、自信があった。「向こうが先に落ちたと感じた。7割ぐらい“勝った”かなって」。自分は右四つ、相手は左四つ。「けんか四つ」の差し手争いで、激しい突き合いになった。土俵際でもつれ、勝ち名乗りを受けた。物言いがついたが、軍配通りになった。

 「足も前に出てる、手もよく出てる。でも、硬かったね。最後にいなされて。“勝ちたい、勝ちたい”と思っちゃうから…」。2年前に結婚した幼なじみニノさん、昨年11月に生まれた長女アナスタシアちゃんが、エネルギー源だ。頭を“盛った髪形”にセットすると、身長192センチの自分より背が高くなる超ビッグな妻。生後2カ月にして体重7キロ近いというビッグベビー。約8000キロ離れた故郷ジョージアで待つ2人と連日、メール、テレビ電話でやりとりをする。「やっぱり勝つと楽しいね。(ニノさんも)勝ち続けて、喜んでるよ」と声が弾んだ。

 春日野部屋も“その時”を心待ちにしている。過去2横綱1大関ら38人の幕内力士を輩出した名門も、意外なことに約半世紀、46年も優勝と縁がない。師匠の春日野親方(元関脇栃乃和歌)は「(栃ノ心は)そんな大それたことは考えてないだろう」と言いつつも「随分たちますね~。申し訳ない」と苦笑いした。

 7日目に鶴竜との全勝対決に負けた翌朝「10勝できるかな…」とこぼした栃ノ心は、もういない。「優勝? まだまだ早いでしょう」。言葉と裏腹な笑みに、野心がのぞいた。【加藤裕一】