貴親方が貴ノ岩への質疑打ち切り、微妙な空気2分半

朝稽古を終え報道陣のインタビューに答える貴ノ岩(左)と貴乃花親方(撮影・奥田泰也)

 長い沈黙を破った。大相撲の元横綱日馬富士関による傷害事件の被害者、西十両12枚目貴ノ岩(28=貴乃花)が1日、京都・宇治市の宿舎で、師匠の貴乃花親方(元横綱)とともに取材に応じ、意欲を語った。貴ノ岩が公の場で発言したのは、昨年11月2日以来119日ぶり。順調に稽古に励んでいることを明かしたが、事件で負傷した頭部について聞かれると貴乃花親方が質問を遮り、囲み取材はわずか2分半で終了した。春場所(11日初日、エディオンアリーナ大阪)出場の可否は8日に判断する。

 小雨が降る中、朝稽古を終えた貴ノ岩が貴乃花親方とともに報道陣の前に姿を現した。テレビカメラ6台、約70人の報道陣を前にこわばった表情を見せた。弟子の緊張を感じたのか、貴乃花親方は「元気に稽古しています。何か質問を」と促した。

 注目の第一声。現在の体調を聞かれた貴ノ岩は「少しずつ体を動かしています」と小さめの声で話した。体の感覚を問われ「まだまだしっくりきていない。相撲を取っていないので」と続けた。稽古は、京都入り後の2月26日から再開した。頭部を負傷した後については、「リハビリという感じ。入院しながら」と明かした。

 体重は149キロで、負傷前とほぼ変わらない。だが、稽古では相撲を取っておらず、ぶつかり稽古の激しさも本来とは程遠い。この日も四股、てっぽうなどの基礎運動で汗を流したが、関取衆による申し合い稽古には参加しなかった。ぶつかり稽古で、平幕の貴景勝に胸を出すだけにとどめた。それでも春場所出場について聞かれると「一生懸命やることだけを考えている」と、はっきりとした口調で話した。

 次々に来る質問に対して、貴ノ岩は真面目に答えた。しかし「横綱(元日馬富士関)に被害を受けた頭部の…」という質問の瞬間、貴乃花親方が遮った。「その話はごめんなさい。もうこの辺で」。弟子の背中を軽く押しながら囲み取材の場から立ち去った。ようやく沈黙を破ったものの、わずか2分半で打ち切られ、最後は微妙な空気に包まれた。

 昨年11月の九州場所から2場所連続休場で、全休すれば翌場所で幕下陥落が確実となる今場所。相撲勘の鈍りに加え、傷害事件の被害者という立場を精神的に乗り越えられるかが鍵となりそうだ。周囲からの視線は、間違いなく今までとは違う。険しい再起の道に挑むことになる。【佐々木隆史】