御嶽海、大関へあと11勝 阿武松部長は内容も重視

殊勲賞と技能賞を受賞した御嶽海(中央)は賜杯を掲げ敢闘賞の豊山(左)、朝乃山と三賞の記念撮影に臨む(撮影・小沢裕)

<大相撲名古屋場所>◇千秋楽◇22日◇ドルフィンズアリーナ

 関脇御嶽海(25=出羽海)が、大関とりとなる秋場所(9月9日初日、東京・両国国技館)で大きな壁に挑む。優勝から一夜明けた千秋楽の一番で、平幕の豊山に負けて13勝2敗で今場所を終えた。大関昇進の目安の三役で3場所33勝以上まであと11勝。数字の壁を越えるのも必要だが、昇進をあずかる審判部の阿武松部長(元関脇益荒雄)は、内容も重視することを示唆した。

 意地と意地とのぶつかり合いだった。初優勝から一夜明けの、千秋楽での一番。優勝を争った豊山の強烈な立ち合いにも全くひるまなかった。右を差して一気に土俵際へ。勝負ありと思ったが粘られた。攻めから一転、激しい突きに引いた。それでもうまく逃げ回り、再び右を差した。盤石の体勢。一気に土俵際に運んだが、豊山の捨て身の掛け投げに土俵下に転げ落ちた。迫力ある一番に、会場内は大歓声に包まれた。

 支度部屋に戻ると、悔しさをあらわにした。同じく学生出身で1学年下の豊山に完敗。「今日の一番はしっかり勝ちたかった。最後の最後で勝って終わりたかった」とつぶやいた。

 初優勝を果たし13勝2敗で終えた今場所。夏場所の9勝を加えると合計22勝となり当然、秋場所での大関とりの声は挙がった。だが阿武松審判部長は「内容が大きく加味される。(今場所は)横綱が出ていないから、いろいろな意見があると思う。横綱とどれぐらい距離が縮まっているか。どういう相撲を取るか、そこを見たい」と慎重だった。

 支度部屋では悔しさをにじませたが、優勝インタビューでは「上を目指して稽古して励んでいきたいと思います」と、大関とりの来場所を見据えた。過去の横綱との対戦成績は相撲を取って7勝17敗。後半戦での対戦が濃厚なだけに連敗となれば印象は悪く、休場した3横綱が万全の状態で出てくれば高いハードルになりそうだ。

 自身3度目の殊勲賞と、2度目の技能賞を受賞。技能賞は、反応の早さや四つのうまさを評価されてのものだった。その四つをもってしても最後を締められなかったが「充実した場所だった」と15日間を振り返った。そして「ゆっくり休みたい」とポツリ。大関とりへ、今だけは羽を休める。【佐々木隆史】

 ◆御嶽海の母マルガリータさん (表彰式を見て)すごく感動した。なかなかもらえないと思うので。自分の息子を褒めることになるけれど、すごいな、うれしいと思いました。13日目と14日目はおなかが痛くなった。胃が痛くなった。こんなこと、こんな気持ちは初めてでした。

 ◆会場で観戦した御嶽海の父大道春男さん 運がいいのか、上位の力士がけがをされたりした中でだったけれど、こうして優勝させていただいた。(賜杯を受け取る姿を見て)良かった、よくやってくれたという気持ちでおります。力士みんなが目指すところ初優勝だけでなく、大関という次の夢があると思うので、またしっかりやってほしい。