平成の大横綱去る…貴親方の退職届、満場一致で受理

大相撲の臨時理事会を終えて会見する八角理事長(撮影・小沢裕)

平成の終わりに「平成の大横綱」が角界を去った。貴乃花親方(46=元横綱)が1日、日本相撲協会を退職することが決まった。東京・両国国技館で行われた臨時理事会で、退職届と貴乃花部屋の力士8人、床山、世話人の計10人の千賀ノ浦部屋への所属先変更願について審議され、満場一致で受理され、貴乃花部屋は消滅。八角理事長(元横綱北勝海)は「残念」などと話し、これまでの功績、貢献をたたえた。貴乃花親方は何らかの形で相撲に携わりたい意向を示している。

20人余りの役員で行われた臨時理事会は、わずか30分程度で終了した。9月27日の理事会では書類に不備があるなどの理由で議題に挙がらなかった、貴乃花親方の退職届と、その弟子らの千賀ノ浦部屋への所属先変更願について審議。八角理事長は「残念だという思いはみんなあったと思う」と話したが、異論は出ず、満場一致で承認された。

現役時代の若貴ブーム、10年に二所ノ関一門を飛び出して役員候補選挙に出馬した貴の乱、そして昨年の元横綱日馬富士関による暴行事件を巡る協会への徹底抗戦。88年の初土俵から30年、良くも悪くも相撲界に注目を集めた「平成の大横綱」が相撲協会を去った。

貴乃花親方はこの日、臨時理事会前に自身の応援会公式サイトでメッセージをつづった。ファンに向けて弟子への変わらぬ声援を求め、師匠ではなくなったことを印象づけた。9月25日に退職の意向を示して以降も心変わりはない。この1年、特に対立してきた八角理事長も従来と違い、最後は称賛を惜しまなかった。

八角理事長 貴乃花親方は22回の優勝をなし遂げた立派な横綱です。大相撲への貢献は非常に大きいものがありました。今回、このような形で相撲協会を去ることは誠に残念。いろいろありましたけど、いつか一緒に協会を引っ張っていくと思っていただけに残念。

協会執行部との対立は深刻だった。元日馬富士関の貴ノ岩への暴行事件では、内閣府に告発状を提出。徹底抗戦の構えだった。その後、取り下げたが、内容については事実無根と認めろと迫られたと明かした。また今回の背景に、全ての親方は5つある一門のいずれかに所属しなければならないという、7月26日の理事会で話し合われた議案がある。これが唯一、無所属の貴乃花親方を追い詰めた。

だが実は、八角理事長は「高砂一門で受け入れを協議する用意がある」と、自身の所属一門に迎える計画を明かした。他の4つの一門も受け入れを拒絶してはいないと強調。告発状の件も協会側は全面否定した。食い違いが互いに不信感を招き、貴乃花親方から弁護士を通じてのみ接触を求められた八角理事長は「直接会ってお話しできなかった」と説明後、何度も繰り返した「残念」と付け足した。

優勝22回は横綱白鵬の41回を除けば親方衆の中で断トツだ。優れた成績を残した横綱に与えられる大鵬、北の湖(ともに故人)に続く一代年寄名跡が消滅。1つの時代が終わった。