貴景勝、父の厳命は年20キロ増量「執念ありがたい」

優勝賜杯を手に母・純子さん(前列左)を見つめる貴景勝(中央)。右は父一哉さん(撮影・鈴木正人)

<とっておきメモ>

<大相撲九州場所>◇千秋楽◇25日◇福岡国際センター

父一哉さんと二人三脚でつかんだ初優勝でもあった。貴景勝は「信じてくれるのはオヤジしかおらんかった。オヤジがいなかったらちゃらんぽらんやった」と小中学時代を振り返る。

生まれた時は体重2800グラム。幼少期から食が細く、体は小さかった。小学低学年では運動会のリレー選手に選ばれるほど、足が速かった。ただ、小3で相撲を始めると、食生活が激変。1年間で20キロずつ太るよう一哉さんから言われた。高校時代には空手、社会人になってからは極真空手の経験がある父は絶対的で、怖い存在だった。

トレーニングの一環とはいえ、食事にまつわるつらい思い出は尽きない。毎日牛乳2リットルは当たり前で、ある日の飲食店ではハンバーグ定食3人前を食べさせられた。1個450グラムのハンバーグはもちろん、ご飯や野菜などの付け合わせも含めて完食がノルマ。3~4時間かかった。中学時代は1度の食事で豚肉1キロを胃袋に詰め込んだ。ただ、いつも一哉さんは食べ終わるまで黙って待ってくれた。

風呂上がりの体重測定が日課。増えていないと怒られるのが嫌で、小学生の時には風呂上がりにトイレに行くふりをして、パジャマのポケットに1キロのダンベルを忍ばせた。「こっちも小学生ながらに必死やったから」。ただ、増えすぎてバレて結局怒られた。

そんな出来事も今は笑って語れる。「父親も執念持ってやってくれてありがたい」。この日は心の底からの感謝の思いが自然と出た。