稀勢の里へ横審から「激励」1月休場なら引退勧告も

25日、田子ノ浦部屋千秋楽祝賀会での稀勢の里(撮影・小沢裕)

横綱稀勢の里(32=田子ノ浦)の進退に“待ったなし”がかかった。日本相撲協会の諮問機関、横綱審議委員会(横審)は九州場所千秋楽から一夜明けた26日、福岡市内で定例会合を実施。同場所で横綱として87年ぶりに初日から4連敗(不戦敗を除く)し、途中休場した稀勢の里に対して、全9人の委員が満場一致で「激励」を決議した。北村正任委員長(77)は来年1月の初場所出場を厳命。それでも休場した場合は、引退勧告など、さらに厳しい決議も辞さない構えだ。

ついに横審が、重い腰を上げた。7月の名古屋場所まで、横綱として歴代最長の8場所連続休場した時でさえ、稀勢の里の意向を尊重。静観してきた。だがこの日の北村委員長は強い口調で「長期にわたって、その地位にふさわしい力量を示せずにいる。九州場所における復活に願いをかけたファンの失望は大きい。委員会規則に定められた『激励』を決議する。来場所での再起に期待する」といった決議内容が記された文書を読み上げた。「個人的な気持ちでいえば来場所は出てきてほしい」と続けた。

稀勢の里は、長期休場明けの秋場所を10勝5敗で乗り切り、今場所前には「優勝宣言」まで飛び出した中で、4連敗して途中休場した。その際に「右膝挫傷捻挫で全治1カ月」との診断書を提出。12月2日に始まる冬巡業も、最初から参加するのは難しい状態だ。

それでも杉田委員が「来場所の休場は想定していない。相当、皆さんに失望を与えている」と話すなど、厳しい意見も相次いだ。北村委員長も「長い間けがと取り組んできているわけだから。『まだ治りません』ということなのかどうなのか、はっきりつかめない」と、けがを理由に再び休場が続きかねない状況を危惧した。それでも初場所を休場した場合は、引退勧告などさらに厳しい決議がなされる可能性についても「考えなければならないかもしれない」と否定しなかった。

横審の決議事項には厳しい順から引退勧告、注意、激励がある。激励の決議は今回が初めてだった。山内委員は「けがはみんな折り合いをつけながらやっている。横綱の良識と地位の重みに立って自ら判断する時もある。初場所はそういう場所になるのでは」と、1月は問答無用に進退の懸かる場所になるとの見解。稀勢の里は九州場所5日目朝に休場を表明した際に「しっかり考えていきたい」と初場所出場は明言しなかった。だが今回ばかりは、休場の選択肢はなくなった格好だ。【高田文太】

◆横審の勧告規定 横綱審議委員会規則の横綱推薦の内規第5条に「横綱が次の各項に該当する場合、横綱審議委員会はその実態をよく調査して、出席委員の3分の2以上の決議により激励、注意、引退勧告等をなす」とある。該当理由は(イ)休場が多い場合。ただし休場する時でも、そのけが、病気の内容によっては審議の上、再起の可能性を認めて治療に専念させることがある(ロ)横綱として体面を汚す場合(ハ)横綱として不成績であり、その位にたえないと認めた場合となっている。なお、勧告に強制力はない。朝青龍が10年初場所中に泥酔し暴行問題を起こした際には、引退勧告書を相撲協会に提出した。