稀勢の里このまま引退なら歴代最低の勝率5割

稀勢の里(右)は寄り切りで栃煌山に敗れる(撮影・小沢裕)

<大相撲初場所>◇3日目◇15日◇東京・両国国技館

進退が懸かる横綱稀勢の里(32=田子ノ浦)が崖っぷちに追い込まれた。東前頭筆頭で同学年の栃煌山に、いいところなく寄り切られ、2日連続の金星配給となる3連敗。昨年9月の秋場所から3場所にわたる連敗は、横綱では貴乃花を抜いてワーストの8連敗となった。横綱が2場所連続で初日から3連敗するのも宮城山以来88年ぶり。日本相撲協会の幹部から“横綱失格”の声も漏れた。

3連敗した稀勢の里は、がっくりとうなだれた後、何かを確認したように、うなずいた。直後の結びの一番の間、控えに座ると、口を真一文字に結び、悔しさを押し殺した。負けたのは成長著しい若手ではなく、かつてともに大関昇進を目指した同学年の栃煌山。しかも昨年11月の九州場所で最後に取った相手に2場所連続で負けた。同世代にも後れを取る、顕著な衰えを示す残酷な結果だった。

立ち合いは左足で踏み込み、低い姿勢で当たって左から攻める相撲人生の集大成をという気概が見えた。だが休場続きと稽古量不足による相撲勘の衰えから、あっさりと栃煌山にもろ差しを許した。左からの下手投げに体をよろめかせ寄り切られた。横綱としては単独ワーストとなる8連敗で、88年ぶりとなる2場所連続の3連敗発進。2日連続で配給した金星は、在位12場所目で計18個目だ。全休の4場所を除けば、出場1場所ごとに2~3個の金星を配給していることになる。支度部屋では、腕組みしながら終始無言を貫いた。

芝田山親方(元横綱大乃国)は、同じ二所ノ関一門をまとめる理事として、先輩横綱として、苦言を呈した。取組後、開口一番「もうダメでしょう」と、引退もやむなしの見解。続けて「横綱としては厳しい。どうしようもない。誰にも勝てない状況だもの」と、横綱失格のレッテルを貼った。

3日連続で負けても座布団が舞わなかった。場内には悲鳴は響いたが、番狂わせとは思われておらず、同情さえ買っている。師匠の田子ノ浦親方(元前頭隆の鶴)は取組前に「信じるしかない」と、進退については稀勢の里の意向を尊重する考え。兄弟子の西岩親方(元関脇若の里)も「勝っても負けても横綱として、堂々と胸を張ってほしい」と、自分の思うように行動すれば良いとの考えだ。休場を除く横綱在位中の成績は36勝35敗となった。このまま引退なら不戦敗が加わり、年6場所制となった1958年以降の横綱では歴代最低の勝率5割(2番目は栃ノ海の5割9分6厘)。衰えを露呈し、すでに進退は窮まっているのかもしれない。【高田文太】