えっ勝ったの?玉鷲が白鵬から初白星「気持ちいい」

白鵬を破った玉鷲は支度部屋で笑顔を見せる(撮影・小沢裕)

<大相撲初場所>◇12日目◇24日◇東京・両国国技館

関脇玉鷲(34=片男波)が、優勝争いで首位を走っていた横綱白鵬を破った。14度目の対戦で初めて勝利し、10勝2敗で並んだ。現役最多の連続出場1148回という鉄人。同じモンゴル出身の大横綱の独走ムードを一蹴し、初優勝も現実味を帯びてきた。関脇貴景勝ら3人が、1差で2人を追っている。

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実感が湧かない。玉鷲は「『えっ、勝ったの?』と。第三者が見てる感じ」と言った。過去13戦全敗と、ことごとくはじき返されてきた白鵬の壁。インタビュールームでは、うっすらと涙が浮かんでいた。

本能でつかんだ白星だった。張って突き放してくる横綱。師匠の片男波親方(元関脇玉春日)に「張り返すな」と言われていたが、思わず張り返した。効かずに押し込まれ土俵際。左のいなしで後ろ向きにさせ、「そこから覚えていない」と無心で前へ。師匠の注意を破って、思わず手が出てしまったが「心の本能を起こしてくれた」と玉鷲。目覚めた野性の勘が、反応の良いいなしにつながった。

15年春場所で初土俵から所要66場所での新三役。遅咲きな理由について、片男波親方は「相撲を分かってきた」と説明する。以前は常に全力を出し切っていたが、今は6~7割で戦うことを覚えたという。「野球の投手で言うなら打たせて取ることを覚えた」と同親方。連続出場は現役最多の1148回。もともとの頑丈さに加え、年齢を重ねて熟しつつある取り口が力士生命を伸ばしている。

トップタイに並んだが「それは頭に入れていない」と初賜杯へ意識を向けない。「自分のことはよく分かっている。意識したら良くない」。それでも、この白星は格別。「気持ちいいですね。大横綱ですから」。支度部屋では終始にやにやしながら、余韻に浸っていた。【佐藤礼征】