静岡初の横綱へ!全国中学王者の吉井が春場所初土俵

春場所での初土俵に向け、得意の突っ張りのポーズで気合を前面に出す吉井

焼津港中で昨夏の全国中学校相撲選手権で、県勢初の個人、団体2冠に輝いた吉井虹(こう、15=中川)が、満を持して大相撲春場所(3月10日初日、エディオンアリーナ大阪)で初土俵を踏む。

稽古合流から3日目となった2月28日、大阪・池田市の部屋で取材に応じた。2日には新弟子検査を受検。平成最後の本場所で“平成最後の大物”が、太もも回り80センチにも達する強靱(きょうじん)な足腰を武器に、相撲界の扉を開く。

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曽祖父も祖父も父も料理人の家系から誕生した吉井が、大物食いを目指して相撲界に飛び込む。

昨夏の全中では個人で県勢3人目、団体で初の優勝。もちろん2冠は県勢初の快挙で、高い将来性から、把握できないほどの数の部屋から誘われた。その中で、約2年前から熱心に誘いを受けてきた中川部屋を選んだ。すでに稽古を3日間経験。「熱気や雰囲気が、これまでと全然違う。親方や地元の期待に応えたい」と、将来の幕内、さらにその上を目指す。

178センチ、145キロの立派な体は発展途上ながら、太もも回りは80センチに到達している。幕内トップクラスの太ももの太さを誇る、身長191センチの大関栃ノ心が91センチ。身長差を考慮に入れれば、すでに幕内力士にも匹敵するほどの足腰を備えている。5歳で柔道を始め、焼津港小4年時に参加した、わんぱく相撲で優勝し、本格的に相撲の道を進み始めた。焼津港中では、週6日は土俵で3時間稽古し、残る1日は1周1キロの山を、約10キロの木材を持ちながら10周。「すり足の時もありました」と、徹底的に下半身を鍛えてきた。

師匠の中川親方(元前頭旭里)も「やはり、お相撲さんらしいドッシリとした下半身が一番の魅力。けがをしないように、じっくりと体をつくっていきたい」と期待する。現在は突き、押しも右四つも得意だが、同親方は「プロの世界では『これ』というものがないと上にはいけない。器用貧乏にならないよう、武器を身に付けさせたい」と1、2年は基礎運動とぶつかり稽古を中心に、方向性を見極めていく方針だという。

プロ意識も強い。小学5年時には中学卒業後のプロ入りを決意していた。「友だちの親には『高校に行った方が将来、安心だよ』と言われたけど、どうせプロになるなら高校に行くよりも3年間、体をつくった方が有利。高校に行けば楽しいかもしれないけど、夢がある人は何かを捨てないといけない」と力説。今後に支障が出ないよう、無呼吸症候群を誘発する危険性のあったへんとうは昨年末に手術して除去した。大相撲中継は毎日、幕内の取組を見て研究。豊富な運動量で格上や大柄な相手を次々と破る前頭嘉風が目標だ。

「趣味は相撲」と答えるほど、相撲漬けの毎日は歓迎だ。部屋の兄弟子は、ほとんど10歳以上年上とあって、すでに「コウくん」と呼ばれる人気者。母まゆみさんが歌手福山雅治の大ファンで、ヒット曲「虹」にちなみ名付けられたが、まるで違う道を選んだ。「クラスメートには『横綱になって』と言われます」。静岡県出身初の横綱の期待も心得ている。【高田文太】

◆吉井虹(よしい・こう)2003年(平15)8月1日、静岡市清水区生まれ。5歳から柔道、焼津港小4年から相撲を始める。同5年からは相撲一筋。わんぱく相撲静岡県大会を4、5年時に優勝。焼津港中3年時の昨年8月、全中で個人、団体の2冠。得意は突き、押し、右四つ。家族は両親と兄。178センチ、145キロ。血液型A。