北の富士氏は喝!も、貴景勝「勝負より高める場」

横審の稽古総見を見学した北の富士勝昭氏(撮影・河田真司)

「角界のご意見番」が新大関に喝! 大相撲夏場所(12日初日、東京・両国国技館)に向けた横綱審議委員会(横審)による稽古総見が6日、同所の相撲教習所内で行われ、新大関貴景勝(22=千賀ノ浦)は三役以上の申し合いで3勝8敗と存在感を示せなかった。

持ち前の当たりを組み止められる場面が目立ち、解説者の北の富士勝昭氏(元横綱)にも活気の乏しさについて疑問符を打たれた。

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能あるタカは爪を隠す!? 申し合いで大きく負け越したものの、貴景勝は「立ち合いはいい感触。あとは勝負勘です」と気丈にふるまった。鋭い出足は影を潜め、立ち合いから突き放す展開はほとんどなかった。「組み止められましたね。簡単にはいかない」。11番中6番は鶴竜や豪栄道、高安と取り、わずか1勝。横綱、大関陣に圧倒される結果となったが、本人は意に介さない。あくまで本場所の結果が全て。「そこ(勝敗)はあまり気にしていない。勝負より自分を高める場。場所前のいい悪いは、何も参考にならない」と強調した。

角界の未来を背負う22歳に、期待の大きさゆえか、厳しい目も向けられた。稽古を見学した解説者の北の富士勝昭氏(元横綱)は、貴景勝について「もっとねぇ~。時代も(令和に)変わったわけだから、もっと元気にいってほしかったな。朝稽古がコレじゃあなぁ…」と先が思いやられる様子。「オレだってヒマじゃないんだから。もっといい稽古が見たかった」と、がっくりと肩を落とした。横審の矢野弘典委員長も「まだ調子は十分じゃない。ときどきいい立ち合いもあったけど」と評価した。

当の貴景勝は、ハイレベルな稽古場で充実感を覚えた。新大関としては自身初となる横審の稽古総見。申し合い後のぶつかり稽古では、横綱白鵬の胸を借りた。「角界の1番強い人たちと肌を合わせられる。そういうことが脳に感覚が残る」。直近の稽古では、苦手意識を抱く四つに組まれる展開も想定。この日の申し合いで最後に行われた逸ノ城との一番では、まわしを切って押し出す場面もあった。初日まで残り6日。「区切りの場所。いいスタートを切りたい」。新元号「令和」として初めて迎える場所へ、最終調整に入る。【佐藤礼征】