師匠感慨、朝乃山優勝運も重なった/大ちゃん大分析

優勝を決め、タイを手に笑顔の朝乃山(左)と、手をたたいて喜ぶ高砂親方(撮影・鈴木正人)

<大相撲夏場所>◇14日目◇25日◇東京・両国国技館

令和最初の本場所で、西前頭8枚目の朝乃山(25=高砂)が初優勝を飾った。近年、押し相撲の若手が台頭する中、王道の四つ相撲で大関豪栄道を寄り切り。12勝2敗とし、直後に1差だった横綱鶴竜が敗れ、昨年初場所の栃ノ心以来となる平幕優勝を決めた。富山県出身としては元横綱太刀山以来103年ぶり、三役経験がなく優勝したのは佐田の山(後の横綱)以来、58年ぶりという記録ずくめ。新時代到来を印象づける優勝となった。

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相撲を取ってないのに汗をビッショリかいてしまった。場所中だから弟子のことは差し控えたいが、今日のところは「朝乃山、おめでとう」だな。大関相手に右が入ったのが勝因だが、慌てず上手を取った左をはさみつけて前に出たあたりに、今場所の攻めの姿勢が表れていた。

入門した時は、恵まれた体を生かした相撲を取れば三役までは行くと思った。こうしなさい、と教えれば迷わず聞き入れる素直な性格。この優勝も無欲の勝利だろう。自分の初優勝は何度か優勝決定戦で負けて、かなり苦労したのに大したもんだ。

今場所は白鵬不在、新大関も途中休場、13日目の栃ノ心戦も審判がよく見てくれたおかげで星を拾えた。運が重なった優勝でもある。あれよあれよと、簡単に優勝したと思われるが、目に見えない追い風もあったことを忘れてはならない。性格からして、勘違いしない力士だから大丈夫だと思うが。

師匠から見れば、まだ発展途上。立ち合いの当たりや、まわしの取り方、持ち前の懐を深くした取り口など伸びしろはある。真価が問われるのは来場所。いや今場所は14日目まではいい相撲だった。それを最後まで貫いて締められるか。だから千秋楽の相撲も師匠としては注視したい。(日刊スポーツ評論家・高砂浦五郎=元大関朝潮)