朝乃山が出身地富山で初合宿 3000人観衆集結

大勢の観衆が駆けつけ、初優勝を祝福する横断幕が掲げられる中、稽古で軽快な動きを見せた朝乃山(手前左から2人目)

大相撲夏場所で初優勝した前頭朝乃山(25=高砂)が12日、出身地の富山県で初めて行われた高砂部屋の合宿に参加し、大勢のファンから歓声を受けた。富山・射水市でこの日から始まった合宿の稽古には、平日午前にもかかわらず、郷土のヒーローを一目見ようと約3000人もの観衆が集結した。

関係者によると午前4時には約30人が集まっていたといい、稽古序盤から大盛り上がりだった。ストレッチするため、土俵下に座り込んだだけで「オーッ」という歓声が起きると、朝乃山は思わず照れ笑いを浮かべた。相撲を取る稽古では、朝乃山は地元実業団の選手や部屋の若い衆らを相手に、計10番取って全勝。貫禄の相撲内容と稽古後には「皆さんの力で優勝できました」とあいさつし、場内をさらに沸かせた。

本人に先立ち、師匠の高砂親方(元大関朝潮)が「この合宿が決まった時には、朝乃山が優勝することは決まっていなかったのですが、まさか優勝するとは思わなかった」と、少しコミカルな口調で話すと大きな笑いが起きた。それでも師匠は「大相撲は地域密着型のプロスポーツ。出身地まで紹介するのは相撲だけ。野球やサッカーにはありません。朝乃山にとって富山県は非常に大きなバックボーンです」と、変わらぬ声援をお願いすると、盛大な拍手と歓声が起きた。

朝乃山にとって呉羽中、富山商高の9学年先輩にあたり、実業団のアイシン軽金属に所属する中村淳一郎さん(34)は、朝乃山のプロ入り後、初めて胸を合わせたといい「全然力が違いますね。ケガしないようにするので精いっぱいでした」と、稽古を振り返った。中村さんは富山商高時代、コーチとして朝乃山を指導。夏場所千秋楽で、トランプ米大統領がしこ名をフルネームで呼んだのを聞き「涙が出そうだった」という。しこ名の下の名前の「英樹」は、富山商高相撲部の元監督で、一昨年に40歳で亡くなった浦山英樹さんに由来する。今は浦山さんの長男秀誠が富山商高2年で相撲部に在籍するだけに、現在も同高コーチでもある中村さんは「浦山さんの長男を強くするのが使命だと思っている」と、朝乃山の活躍によって、決意を強くした様子だった。

合宿は13日までだが、その後は16日に富山市で行われる優勝パレードまで、故郷で多忙なスケジュールが待っている。それでも朝乃山は「ああいう歓声の中で相撲を取れたのはうれしい。いい成績を残して帰ってくれば、それが地元への恩返しになるはず」と、自己最上位へと番付を上げることが確実な名古屋場所(7月7日初日、ドルフィンズアリーナ)を見据えていた。