“スーパーヘビー級”逸ノ城が張り手連発で3連勝

宝富士(左)の顔面を強烈に張る逸ノ城(撮影・鈴木正人)

<大相撲名古屋場所>◇4日目◇10日◇ドルフィンズアリーナ

西前頭4枚目の逸ノ城(26=湊)が、張り手連発の新境地で3連勝を飾った。

西前頭5枚目の宝富士の顔面に、計6発も張り手を浴びせて押し出し。これまでの四つ相撲とは一転、関取最重量227キロの“スーパーヘビー級”の体格を生かした突き、押しで圧倒した。初日こそ敗れたが、新たな武器を手に、無敗の鶴竜、白鵬の両横綱ら4人を追撃する体勢を整えた。

逸ノ城の1発に会場がどよめいた。立ち合い、左のど輪で宝富士の上体を起こすと、狙いすまして右から張り手。「バチーン!」という大きな音とともに先手を奪った。さらに押し込んでから次は右、左の“ワンツー”。たまらず組み付いてきた相手を振りほどき、今度は右を3連発。うち1発は大きく振りかぶる豪快な張り手で、四つ相撲を得意とする本来の逸ノ城とは明らかに違った。相手の顔面に張り手を計6発浴びせると、そのまま押し出した。

「中に入らせたくなかった。(張り手は)ちょっとやりたいなと思っていた。でも、あまりやったことがないので疲れた」と、23秒2の熱戦を振り返った。実は部屋では若い衆を相手に張り手を試していた。3月の春場所で自己最多の14勝を挙げ、初優勝と大関昇進を目標に掲げながら、5月の夏場所では5勝7敗3休と失速。四つ相撲1本では相手に研究されてきたと痛感し「そう簡単に組ませてくれない。突っ張りもできたらと思っていた」と、新境地を求めた結果だった。

土俵外でも変化を求めていた。昨年の名古屋場所では、猛暑で自室の冷房を18度に設定。「冷やせばいいと思っていた。暑いから服も着ないで寝ていた」。結果、体調を壊し、8勝7敗と勝ち越すのがやっと。幕内での名古屋場所は、過去4年で9勝が最高だった。「去年のことがあって勉強した。今年は冷房は24~25度」。冷房で体が硬くなった昨年とは違い、腕も伸びてこの日の張り手連発につながった。「今年はちゃんとジャージーを着て寝ています」。新たな武器を手にしたこと以上に、生活面の変化を、どこか誇らしげに語った。【高田文太】