明生上がった!奄美大島の孝行息子V争いトップタイ

明生(左)はすくい投げで琴奨菊を下す(撮影・小沢裕)

<大相撲秋場所>◇9日目◇16日◇東京・両国国技館

ダークホースの西前頭10枚目明生(24=立浪)が、1敗を守って優勝争いのトップに並んだ。

琴奨菊をすくい投げで破ると、無敗で単独トップだった前頭隠岐の海が敗れた。幕内通算7場所目で、連勝発進などを除く3日目以降としては初のトップタイ。鹿児島・奄美大島出身で、茨城・つくばみらい市の部屋に所属する、おおらかな癒やし系力士は、賜杯争いの渦中にあってもマイペースだ。

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普段のほんわかとした口調とは正反対に、明生は動きも頭もキレていた。立ち合いの鋭い踏み込みから左を差す。相四つだが、琴奨菊が代名詞のがぶり寄りを繰り出すには絶好の形だった。予想通りに寄られた。だが土俵を時計回りに動いてしのぎ、流れるように左からすくい投げ。「押し込まれたのは焦った。でも左が奥まで差せていた。右から(上手)投げを考えたけど、琴奨菊関に力の入る位置を取られ、投げられないと思って左から投げた」。冷静に勝機を探っていた。

取組後、風呂に入っている間に隠岐の海が敗れ、報道陣の質問で初めてトップタイと気付いた。「並んだんですか?」と、抑揚のない口調で聞き返し、「別に、まだ長いので」と答えた。「あまり、しゃべるのはうまくない。話すよりは相撲の方が得意」という。出身の奄美大島の瀬戸内町では、小学校は児童が少なく同級生が1人もいない時期も。そんな小学3年時に大相撲を目指した。「稼いで親孝行したい」。性格がまるで違う気性の激しい元横綱朝青龍にあこがれた。

師匠の立浪親方(元小結旭豊)は「何も言わなくても努力する。真面目というか、真面目すぎる」と証言する。今夏の巡業でも稽古し過ぎて、横綱鶴竜から「無理してやってもダメだ」と、諭されて初めて休むほど。つくばみらい市の部屋の近くに他の部屋はなく、関取衆と稽古できるチャンスと思い、やりすぎる。巡業のない時期は、移動に時間がかかるため、千賀ノ浦部屋に前夜から泊まり込んで出稽古もした。異色の方法も用いて強くなった。

今場所は新十両のころに使った、エメラルドグリーンの締め込みを着用する。先場所は自己最高位の前頭4枚目で4勝11敗と上位のカベにはね返され、初心に帰った。「島の人は身内意識が強い」。マングローブの森でカヌーで遊んだ故郷に、最高の報告ができるかもしれない。【高田文太】

◆明生力(めいせい・ちから)本名川畑明生。1995年(平7)7月24日、奄美大島にある鹿児島・瀬戸内町生まれ。篠川中から11年3月に新弟子検査受検も、八百長問題で春場所が中止。同5月の技量審査場所で初土俵。16年九州場所で新十両、18年名古屋場所で新入幕。最高位は今年名古屋場所の東前頭4枚目。得意は左四つ、寄り。家族は両親と兄。179センチ、147キロ。