引退豊ノ島の妻「娘が引くくらい泣いた」/一問一答

2月1日、記念写真に納まる左から元豊ノ島の井筒親方、長女希歩ちゃん、妻沙帆さん

大相撲の元関脇豊ノ島(36=時津風)が引退し、年寄「井筒」を襲名した。発表から一夜明けた18日、長年にわたって支えてきた妻の梶原沙帆さん(38)に心境を聞いた。【聞き手=佐々木一郎】

-17日に引退発表があり、周囲からの反響はいかがでしたか

「すごかったです。久しぶりに連絡をくれる方もいて、皆さん『お疲れさまでした』と言ってくれます。温かいメッセージばかりでした。関取の座から落ちていた2年間を知っている人ばかりなので、今回は『もっとやればよかった』と言う人は少なく、決断を尊重してくれました。私は何もしていませんが、ねぎらってくれる方もいました。応援してくださったたくさんの皆さまに感謝の気持ちでいっぱいです」

-最後となった春場所の取組はどういう心境で見ていましたか

「これでダメなら最後だと思って見ていました。勝ったらうれしくてうるうるし、負けた時は感情があふれ出ました。プレッシャーなどいろいろなものを背負っていることは分かっていましたから。最後の一番は、娘が引くくらい泣きました」

-長女の希歩ちゃん(7)の様子はいかがでしたか

「負けた時は怒っていました。『何で負けるのよ』って。一番厳しいんです。子どもは正直ですから、嫌なものは嫌なんですよね」

-春場所は無観客で開催されたため、応援にいけませんでした

「こういう状況なので、やむを得ません。それよりも、これまでにもっとすごい相撲を生で見せてもらってきましたから。優勝決定戦(2010年九州場所千秋楽の白鵬戦)や、けがからの復帰もそうです。いい相撲を生で見せてくれていたので、そこに価値があると思っています。自分に言い聞かせている面もあるんですけどね」

-引退の決断はいつ聞きましたか

「春場所前に結果次第でやめると言っていました。負け越しが決まった時点で、やめると分かりました。負け越しが決まった後の一番は、もう最後だと分かって見ました」

-希歩ちゃんは納得してくれましたか

「千秋楽が終わってから、時間をかけて話をしました。(豊ノ島から)話を聞いてねと言っても、どういう話になるか分かっているんでしょうね、『聞かない』『やだ』と言うんです。『普通のお父さんになって欲しくない』と言っていました。お父さんは足も痛いし、体もしんどいよ、と3日間くらいかけて説明しました。『お金は貸してあげるって言ってるでしょ』とも言ってました。でも、きーちゃんも、お金がなくなっちゃうからね、と」

-アキレス腱(けん)を断裂し、2016年九州場所から2年間は幕下で苦労しました。あの期間は家族にとってどういうものでしたか

「大変でしたが、関取に戻るという目標があったので、気持ちの強さがありました。最初は階段を上がれなかったのと、節約も考えて、家賃が半分のところに引っ越しました。平米数は半分以下のところにしました」

-勝負の世界から離れて、ホッとした面はありますか

「それはめちゃくちゃあります。先輩のおかみさんたちに聞くと、最初はすごくホッとするけれど、やめた次の場所にさみしい気持ちになるそうです。次の場所はさみしいでしょうね。アスリートの妻は大変だと言われたこともありますが、経験できないことをさせてもらってありがたいです」

-これからの生活で楽しみは何ですか

「アキレス腱のけがをしてからは、控えていたことがいくつかあります。家族でボウリングに行くことが好きだったのですが、やめていました。ディズニーランドに行くことも。子どもと一緒に遊ぶことも、びくびくしていました。子どもが足に乗ることもやめておこうと言っていましたので。今は出掛けられませんが、いずれそういう時間ができたらいいですね」

-これからは断髪式(日程未定)が控えています

「楽しみ半分、ドキドキ半分。引退すればいつかは来ますからね。最後の場所は無観客でしたから、引退相撲の時は多くの人に『豊ノ島~』って声をかけていただきたいですね」