白鵬が中日勝ち越し「6月初めからしてみれば想像できなかった」

全勝を守った白鵬は懸賞金を手にする(撮影・渦原淳)

<大相撲名古屋場所>8日目◇11日◇ドルフィンズアリーナ

進退を懸けて土俵に上がる横綱白鵬(36=宮城野)が、自身が持つ歴代最多を更新する51度目の中日勝ち越しを決めた。

初顔合わせとなった平幕の琴恵光を、立ち合い鋭い踏み込みからの寄り切りで完勝。自身も想像していなかった中日勝ち越しに安堵(あんど)感をにじませた。綱とりに挑む大関照ノ富士も中日勝ち越しを決め、2人が先頭に立って優勝争いを引っ張る。

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昨年7月場所以来となる1年ぶりの勝ち越しに、白鵬の表情が緩んだ。「おめでとうですね。ありがとうございます」と第一声。進退を懸けて臨む今場所。6場所連続休場明けや3月中旬の右膝手術などの不安要素はあったが、ふたを開けてみれば初日から無傷をキープ。「1つはクリアした、ということはあるのかな」としみじみと話した。

横綱初挑戦の琴恵光を相手にしなった。右で張り、右足から力強く踏み込んだ立ち合い。左を差して、右上手を取り、琴恵光の巻き替えに乗じて外四つになると一気に前へ。自らも土俵下に駆け落ちるほど、勢いある寄り切りで下した。7日目の翔猿戦に続き、2日連続の初顔合わせ。「初顔といっても、どこかで稽古をつけたことがある気がする。体を寄せてという感じ。タイミングよく前に出られた」と取組前から勝利の方程式が頭の中にあった。

途中休場した3月中旬に右膝を手術し、生活に支障なく歩けるようになるのに約1カ月かかった。懸命なリハビリを重ね、相撲を取る稽古を開始したのは6月に入ってから。歴代最多44度の優勝を誇る白鵬も「6月初めからしてみれば想像はできなかった」という中日勝ち越し。照ノ富士と並んで全勝を守り、いよいよ残り7日間の勝負になった。「優勝」の2文字がちらついてきそうだが「自分のことで精いっぱいですから。1日一番という感じです」と、今はまだ意識しない。初日から変わらず、自然体で千秋楽まで突っ走る。【佐々木隆史】