<大相撲名古屋場所>◇7日目◇20日◇ドルフィンズアリーナ
最高位は西十両7枚目の朝弁慶(35=高砂)がこの日、日本相撲協会に引退届を提出、受理された。191センチ、186キロの恵まれた体格で、十両を8場所務めたが、長く両膝のけがに苦しみ、先場所を全休。今場所は西三段目79枚目まで番付を落としていた。5月29日には、特に状態が悪かった右膝を手術したが、相撲を取るまで回復するには至らなかった。今場所も初日から休場していた中で引退を決断した。
今後は相撲協会、部屋には残らず、主に外国人観光客に向けた相撲のショーなどに携わるイベント会社の仕事に携わる予定だという。朝弁慶は「後輩力士たちの成長を、間近で見ることができなくなることが、唯一の心残りです。ただ、すてきな部屋に入門でき、充実した力士人生を送ることができました。熱心に入門を誘ってくださった先代師匠(元大関朝潮=故人)、付け人を務めさせていただいた現師匠(元関脇朝赤龍)への感謝の思いは計り知れません。今後は1人の相撲ファン、高砂部屋ファンとして応援していきます。先輩、後輩、応援してくださった多くの方々には、本当にありがとうございましたと言いたいです」と、熱く語った。
ぶつかり稽古の胸出しのうまさには定評があった。十両から幕下以下に番付を下げた後も、痛む両膝に医療用の装具を着けて、胸を出していた。鳴戸親方(元大関琴欧洲)や武隈親方(元大関豪栄道)らが、部屋の力士を連れて高砂部屋を訪れた際は、朝弁慶を胸出しに指名していたほど。やみくもに長時間押させるわけではなく、各力士の力量を見極め、最後のひと踏ん張りの力を出し切らせ、より力を発揮できる押し方のアドバイスなども的確だった。
高砂部屋の関取の朝乃山や朝紅龍はもちろん、鳴戸部屋の前頭欧勝馬や、武隈部屋の前頭豪ノ山らも、朝弁慶の胸を借りて成長した。「いくら僕が胸を出して、みんなが強くなったからといって、僕が得するわけじゃない。でも、僕からしたら、みんなかわいい後輩なんです」などと話したこともあった。温厚な性格で、それが“生き馬の目を抜く”相撲界においては、足かせとなったこともあった。そんな優しい性格を隠すように「朝弁慶」と名付けられた、勇ましいしこ名。高砂部屋の横綱朝青龍が20度目の優勝を果たした直後に入門し、07年春場所の初土俵から17年4カ月。多くの関係者に惜しまれながら、力士人生に幕を閉じた。日時は未定だが、東京・両国国技館での断髪式を計画している。