<大相撲初場所>◇3日目◇14日◇東京・両国国技館
新弟子らによる前相撲が始まり、元朝青龍のおいで、元プロレスラーのブルー・ウルフを父に持つ天狼星(てんろうせい、18=錣山)が、元武蔵丸の武蔵川親方のおい光武蔵(ひかるむさし、19=武蔵川)との元横綱の親族対決を制した。天狼星は立ち合いこそ、光武蔵の激しい突っ張りを受けて守勢に回ったが、突き返して主導権を握った。そこから左に体を開くと、相手がわずかに前のめりになった隙を逃さず、突き落として待望のデビュー戦を白星で飾った。
取組後は「緊張はしたけど、一番最初の相撲が白星で良かった」と、初々しい笑顔を見せながら話した。相手は押し相撲で、天狼星は「強かった。武蔵丸さん突っ張りみたいだった」と、相撲経験はないながらも、天性の圧力を感じたという。師匠の錣山親方(元小結豊真将)は「今、持っているものは出した。前に出る、いい相撲を取れたので100点。相手も武蔵丸さんのおい。『将来のライバルになるんだろうな』と思いながら見ていた」と、ともに関取に昇進する未来を想像しつつ、長く続くライバル物語を予感していた。
一昨年9月から部屋で稽古を積んでおり、昨年11月の九州場所前の新弟子検査に合格した。天狼星はモンゴル、光武蔵は米国ハワイ出身の外国籍とあって、興行ビザ取得後の今場所デビューとなった。今場所初日にあたる12日に、来日していた叔父で元朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏と会食し「頑張れよ」と、ゲキを飛ばされて励まされたという。「(元朝青龍には)技術も教えてもらった。自分は朝青龍のおいで(大関)豊昇龍のいとこ。プレッシャーはあるけど、自分は自分の道で、一生懸命やりたい」と、流ちょうな日本語で話した。
しこ名の天狼星は、太陽の次に明るい星といわれる「シリウス」の日本名。錣山親方は「相撲界で一番輝く星になってほしいと思って」と、由来を明かした。天狼星も「好きな名前」と、すっかり気に入っている。好きな言葉は「一生懸命」。「誰よりも頑張る『一生懸命』という言葉を大事にしている」と、猛稽古で横綱まで駆け上がった叔父のように稽古に励み、すでに部屋では三段目力士の稽古に入っているという。
当初はプロ野球選手を夢見て、明徳義塾中に野球留学していた。それが元朝青龍に「相撲をやらないか」と勧められて相撲に転向。186センチ、116キロと、まだ細身だが、錣山親方は「足腰の良さ、体の柔らかさがある。朝青龍関というよりも、白鵬関(現宮城野親方)に似ている」と、歴代最多45度の優勝を果たした大横綱をほうふつとさせる、潜在能力を感じていた。
元関脇寺尾の先代錣山親方(故人)から、部屋での稽古、入門を許可された“寺尾の最後の弟子”でもある。寺尾の愛弟子として知られる、兄弟子の小結阿炎からは、デビュー戦に向けて「気楽に行け」などと、先代師匠を思わせる、おおらかなアドバイスを送られたという。また、今場所が綱とりの、いとこの豊昇龍の活躍は常にテレビで確認しているといい「頑張ってほしい」と話し、刺激をもらっている。さまざまな名力士との縁を持つ新星が、令和の相撲界を盛り上げていく。【高田文太】