元稀勢の里 親方から愛弟子大の里へ「稽古は質より量」直系4代続く横綱の系譜 インタビュー

元稀勢の里の二所ノ関親方

師匠の二所ノ関親方(38=元横綱稀勢の里)が、今場所前、インタビューに応じ、愛弟子の大の里との出会いから、現在に至るまでを語った。正式に横綱昇進が決まれば、初代若乃花、隆の里、自身に続き、4代続く二所ノ関一門の横綱の系譜が完成。出羽海一門に続く、常陸山、常ノ花、佐田の山、三重ノ海、武蔵丸の5代に続く、2例目の長さとなる。悲願の舞台裏を師匠が、語り尽くした。【取材・構成=高田文太】

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-大の里関と最初に会ったのはいつですか

二所ノ関親方(以下、親方) 直接会ったのは日体大に行ってからですかね。「いい子がいるよ」って聞いて。直接行って、それが始まりでしたね。(大学)4年生じゃないですかね。

-日体大の稽古場で

親方 そうそうそう。

-第一印象は

親方 日本人離れしていますよね、体つきが。なかなか(身長が)190超えて(体重が)180で、動ける力士っていうのは、まれにしかいないですから。相撲っぷりも、誰かに似ているわけでもないし、大の里にしかできない相撲だったので。そういうところに魅力を感じましたね。

-第一印象から「この子はすごい」と感じましたか

親方 まあ、見たらね。体を見て、実績を見たら、すごいと分かるけどね。

-4年生ということは、すでにアマチュア横綱

親方 そうですね。

-直感的に「いずれは横綱に」と感じましたか

親方 横綱というか、大相撲に入ったら、どんだけおもしろいことになるかなという感じでした。横綱とは思わなかったですけど。「どういう相撲を取るのかな」と思いながら。まだまだ発展途上だったので。これからまた、どれだけ伸びるのかなと、期待もしながら声をかけましたけどね。

-初めて会って、すぐに「うちの部屋に来ないか」と声をかけたのですか

親方 どちらかというと、あっちから、というのはあったので。

-大の里関は、自分の弱点をすぐに見抜いてくれたと言っていましたが、何を指摘したのでしょうか

親方 指摘というか、まあ、大相撲とアマチュアの違いというのもありますから。どちらかというと、体の小さい人と対戦してきたと思うのでね。大相撲は、自分よりも大きい人だったり、同等の人もいるわけですから。そういう人たちと、どういうふうに戦えるのかということを、教え込みました。それでもまだ、自分よりも体重の重い人だったり、大きい人に対して苦戦するところがあるのでね。それさえ克服できれば、今後はいいのかなと思いますよね。王鵬にしろ、高安にしろ、自分よりも大きくはないけど、平均よりは大きいので。大相撲は、全く戦い方が違うと思いますよ。体から、しっかりとつくり上げないと。だから、あそこ(大学)で完成じゃないところもまた、魅力だったかもしれないですね。

-親方が引退する時に、横綱を育てたいと言っていました。親方の師匠も、そのまた師匠も横綱。系譜をつなげたい思いでしたか

親方 理念というか、部屋の目標というか。ホームページのトップページに載っていますけど。なかなか直系の4代というのは珍しいと思うので。

-武蔵川親方(元横綱武蔵丸)が5代続いています

親方 そういうのも1つの目標として、やってきました。

-これほど早く弟子の横綱昇進のチャンスが来るとは、思っていましたか

親方 いずれ開花してくれればいいかなという気持ちで、体づくりから、相撲の基本から教えていました。まだ発展途上段階で、自分のものにしつつある。まだまだ、腰が割れたり、パワーが出てくるようなことになると、もっともっと面白い相撲を取れるようになるんじゃないかと。そういう指導はしていきたいなと思っています。今の勝ちというよりは。先の勝ちというものを。本人も、そこにこだわってもらいたいなと思いますけどね。

-言葉にするのは難しいと思いますが「横綱とは」の質問に、どう答えますか

親方 それこそ真に、心技体が充実していないと、なれないと思います。もちろん運もあると思います。日ごろの相撲との向き合い方も大事だと思いますし。うん。自分自身でつかみ取ることも、もちろんそうですけど、運もつかみ取るというか。実力もつかみ取ることと、両方、つかみ取らないといけない。ものすごく大変なことと思いますし。でも、なる時は、ポコッとなるものだと思います。すごく悩んで横綱になれない時代が続きましたけど。横綱になる時は本当に「こんな簡単になれるんだ」という感じでした。いろんなものが自分についていかないといけなかったと思います。これからの過ごし方、向き合い方、それが大事だと思いますね。

-以前、貴景勝関(現湊川親方)が綱とり場所を控えていた際、雲竜型を直接教えたいと言っていました

親方 それよりも、揺るがない下半身、相撲というものを教えたい。それは、なった時はなった時で。自分の弟子に対しては、そういう感じですね。

-以前、本人に「お前の貯金は尽きている」と言ったとのことですが、どこに物足りなさを感じましたか

親方 やっぱり、こうなったらこうなる、というパターンって、稽古量だと僕は思っているところもあるんですよ。とりあえず、やって、体が覚えていく。(大の里は)どちらかといえば質を大事にしている部分があるんですけど、最終的には量をこなして。疲れている時に、どう対処していくか。体にどんどん覚えさせて。意味も分からず、たくさんやっていた稽古が、後から、ものすごく意味があるなと思ったことが、けっこう多かったので。そこの部分で足りないなと思って。中村部屋に移った力士がいた時は、稽古量も多かったけど、パッといなくなった時に(大の里の中で)ちょっと、質に変わっていく感じがあったから。そうすると少しずつ、歯車が合わなくなってくることもあったから。そこはどうなんだ、という話を。

-親方自身、先代鳴戸親方(元横綱隆の里)の師匠から、ものすごい量の稽古を課されていました。もちろん質も必要とされていたとは思いますが

親方 まあ、量でしょうね(笑い)。疲れた時に、最低出力で勝つためにはどうすればいいかとか、いろいろと考えることが増えるので。息が上がるとね。瞬間的に、相手の力を利用しながら勝てないと、持たない時もありますしね。そういう時に、パッとひらめく瞬間があるので。体が充実している状態で相撲を取るよりも、疲れた時の方が、すごく身になる時もあるんですよね。そういう意味で、量をこなしていくことも大事だと思うんですよね。

-1分を超える長い相撲になることもあるので、そういう時に生きてくる

親方 そうですね。根負けしないですし。でも、ちょっと簡単に勝負を決めたがるところがあるので。やっぱり、じわじわ自分の体勢に持っていって絶対に負けないという、盤石の相撲も、これから覚えていかないといけないと思いますし。まだまだ本当に、やることはあると思います。

-盤石の体勢ということですが、現在は左はおっつけですが、ゆくゆくは左で上手を取ったり、そこからの投げだったり、そういうものも身につけさせたいと思っているのでしょうか

親方 投げとか、技に関しては別に、指導するようなことはないと思いますけど。詰め将棋じゃないですけど、詰めて、詰めて、最後に(相手が)何も手も足も出ないような形に持っていくことが、横綱としては大事だと思います。負けない相撲を取る、イコール、強い力士だと僕は思っているので。とにかく詰めていけば。はたくと、また、イチからのスタートになるので。食えば(決着すれば)いいけど。組み立てて、仕留めていくことも大事になるのかなと思います。

-よく「グチャッとつぶすような立ち合い」を求めていると言っていますが、具体的に誰をイメージした立ち合いなのですか

親方 特にはいないですね。感覚というものがありますので。それって、長くやっていないと分からないものでもありますので。

-以前、初優勝した際に「まだ完成度は10%」と言っていました。今は何%ぐらいだと感じていますか

親方 パーセンテージは分からないけど、でも、まだじゃないですか。まだ形だって、僕はないようなものだと思っていますし。その時点で、もう3回優勝していますから。もうなったら負けない、ということもそうですし、常に自分の体勢に持っていけることが実力だと思いますし。そういう相撲を目指していってほしいなと思います。まだ、十分じゃない状況で勝っている相撲が何番かあるので、それを自分の十分に持っていけるぐらいになればいいかなと思います。