“史上最強の新弟子”オチルサイハン、4年半待って新弟子検査受検へ すでに実力は横綱級の声も

今年4月、正式に伊勢ケ浜部屋の研修生となり、うれしそうに笑顔を見せていたバトツェツェゲ・オチルサイハン

“史上最強の新弟子”が満を持して角界入りする。

日本相撲協会は3日、秋場所(14日初日、東京・両国国技館)の新弟子検査の受検者を発表した。5日に両国国技館で行われる新弟子検査に、関係者の間では「すでに実力は大関、横綱クラス」との呼び声高い、モンゴル出身のバトツェツェゲ・オチルサイハン(23=伊勢ケ浜)が受検することが決まった。熱心なファン、関係者の間では、将来の横綱と目されている実力者は、順調ならビザを取得後の九州場所(11月9日初日、福岡国際センター)の前相撲で、初土俵を踏む。

15歳の18年春に来日し、神奈川・旭丘高に1年から留学した。同高時代は目立った成績を残せなかったが、これほどまでに前評判が高くなった理由は、同高卒業後から伊勢ケ浜部屋で4年半、みっちりと稽古を積んで才能を開花させたためだ。

大相撲の規定で、外国出身力士は1部屋1人まで。伊勢ケ浜部屋所属では今年1月の初場所中に引退するまで、モンゴル出身の横綱照ノ富士が現役を続けていた。照ノ富士が引退後、外国出身力士に必要な半年間の研修期間が正式にスタート。研修生として、それまでと変わらず猛稽古で知られる、伊勢ケ浜部屋で鍛錬し、さらに実力を向上させていた。

伊勢ケ浜部屋には、いずれも前頭で先場所金星を獲得した伯桜鵬、先場所の優勝を争った熱海富士と草野、さらに優勝経験者の尊富士ら、実力者がひしめき合っている。さらに前頭翠富士、十両錦富士、宝富士と、全部屋を通じて最多、7人もの関取衆が在籍。その中にあっても、オチルサイハンの実力は抜きんでている。

当たり前のように関取衆の申し合いに参加し、しかもその中心。オチルサイハンが連勝を重ねることが多い。部屋の関取衆を目当てに出稽古に来た他の部屋の関取衆が、オチルサイハンに、まるで歯が立たず、自信を失って帰路に就くといったこともあった。

本場所に出場できないオチルサイハンにとっては、他の部屋の力士が出稽古に来た時にしか、自身の実力を知る機会はない。そこで圧倒する中で、成長を感じてきた。正式に研修生となった後の4月には「部屋のみんなからは『デビュー28連勝だ』と言われちゃってて」と、笑って明かしたことがあった。従来の記録は、元小結常幸龍の序ノ口デビューから27連勝が、無傷で積み上げた本割での最長の連勝だ。28連勝なら、序ノ口、序二段、三段目、幕下と、4場所連続の各段優勝、または優勝同点。番付運にも左右されるが、4場所目が幕下15枚目以内なら、前相撲の1場所と合わせて所要5場所という、今後、誰も抜くことができない金字塔、最速での新十両昇進を果たすことになる。

187センチ、155キロで、筋肉のヨロイをまとったような、ガッチリとした体格は、まず、押されない。逆にスピード感のある鋭い立ち合いからの圧力は驚異的。いつになれば初土俵を踏めるのか、先行きが不透明だった時期に「アメリカにいって、アメフトやろうかな」と、冗談で話していたこともあったが、アメリカンフットボールの最高峰、NFLでも通用するのではないかという、強じんなフィジカルの持ち主だ。

まわしを取らなくても圧力勝ちできるのは、横綱大の里とも通ずる。もちろん、まわしを取れば、伊勢ケ浜部屋の関取衆も太刀打ちできないほどの怪力を発揮する。母の妹にあたる、叔母のブルマー・オチルバトさん(43)は、39歳で臨んだ東京オリンピック(五輪)レスリング女子76キロ級をはじめ、五輪や世界選手権出場の常連。長く現役を続けられるほどのフィジカルの強さは、血縁者の存在が証明している。

伊勢ケ浜部屋には、モンゴル出身の幕下聖白鵬が在籍する。ただし、もともとは元横綱の白鵬翔さんが師匠を務めていた宮城野部屋所属。宮城野部屋の閉鎖に伴い、転籍してきた。オチルサイハンは、それ以前から事実上、研修生生活を送っていたため、外国出身力士は1部屋1人まで、という規定には抵触しなかった。春日野部屋に、ジョージア出身の元大関栃ノ心と、旧田子ノ浦部屋から師匠の急逝に伴って転籍してきた、ブルガリア出身の元関脇碧山(現岩友親方)が、同時期に所属していたのと同様とみなされた。

モンゴル語で「オチル」は「神」で「サイハン」は「幸せ」の意味があるという。紆余曲折を経て、たどり着いた新弟子検査受検。やんちゃな性格と、愛くるしい笑顔で、部屋関係者、後援者にも愛されてきた。4年半、耐えて、苦労してきた分、神懸かり的な強さでファンにも愛され、幸せな力士人生が訪れる-。そう信じて、衝撃デビューの日を心待ちにしている。【高田文太】

◆バトツェツェゲ・オチルサイハン 2002年(平14)5月17日、モンゴル・ウランバートル生まれ。モンゴルでのスポーツ歴はバスケットボール、ボクシング。18年春に来日し、神奈川・旭丘高に留学、相撲部に入部。卒業後の21年春に、伊勢ケ浜部屋に入門。内臓検査の結果を受けて、秋場所初日に新弟子検査合格が発表されれば、11月の九州場所で初土俵の見込み。家族は母。叔母はレスリング女子76キロ級で12年ロンドン、16年リオデジャネイロ、21年東京と五輪3大会出場のブルマー・オチルバト。187センチ、155キロ。

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